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 「われわれは、100%賛同してNTTのIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想に参加しているわけではない」

 NTTが提案する次世代ネットワーク構想「IOWN」。そのあまりに大胆な内容から、IOWNの仕様を検討する国際団体「IOWN Global Forum」参加企業の中からも異論が出ている。冒頭の発言は、IOWN Global Forumに参加するとあるIT企業幹部が取材中に漏らした言葉だ。

 IOWN構想は、通信とコンピューティングの分野にまたがるNTTの巨大構想である。目標時期は6G到来の2030年ごろ。フォーラムの拠点を米国に置き、設立メンバーのNTTや米Intel(インテル)、ソニーに加えて、2021年1月までにスウェーデン・Ericsson(エリクソン)や米NVIDIA(エヌビディア)など世界の通信主要各社も加盟した。NTTの将来インフラのみならず、世界の通信とコンピューティング基盤を塗り替えていこうという壮大な計画だ。

 「プロセッシングと伝送に膨大なエネルギーが要る将来のデータセントリックの世界において、光電融合技術は十分ゲームチェンジャーになりうる」とNTT社長の澤田純氏は力を込める。IOWNが狙うのは、大容量データを低遅延に伝送し、低エネルギーで処理する情報処理基盤を構築することだ。キーとなる技術は、現在の電子回路の基本となっている電子技術に加えて、低エネルギーが特徴の光技術を融合した「光電融合」である。長距離伝送に使われてきた光技術をサーバーの中の演算LSI直前などにまで広げ、最小限の処理に電気を用いる。光電融合を実現するには、光と電子回路の緊密な連携が不可欠であり、同社が開発した低エネルギーで動作する光-電気変換デバイスを活用する。

NTTが開発した光電融合デバイス
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NTTが開発した光電融合デバイス
(出所:NTT)

 光通信自体は、NTTのみならず世界中の通信・コンピューティング事業者が活発に研究開発し、実用化も進んでいる。IOWN構想が大胆なのは、その先のビジョンにある。

 再送やパケット変換等で遅延が発生する現状のTCP/IPではなく、HPC(High-Performance Computing)のメモリーアクセスに用いられるRDMA(Remote Direct Memory Access)を活用しようというのだ。IOWNの特徴であるオールフォトニクス・ネットワーク(APN)は、1つのサービスごとに1つの大容量光パスを割り当て、エンド・ツー・エンドで伝送するシステムのこと。データ圧縮処理が必要なく、大容量データを低遅延に送れる。ここで現在のTCP/IPを用いたままになると、APNの実力を生かしきれない。たしかに、RDMAと組み合わせることで、APNの低遅延性を最大限に引き出すことができる。しかし既存のインターネットの基盤を変えてしまうという大胆な発想となる。

 前述のフォーラム参加企業幹部の発言は、こうしたNTTのあまりに壮大な計画に向けられたものだ。IOWNはまだ構想発表から2年足らずであり、NTT内で個々の要素技術を発展させたり、フォーラムで2030年に向けたユースケースや要件を検討したりしている段階にある。もしかすると、一部の参加企業には、構想の実現に向けた具体的な道筋が見えていないのかもしれない。