「顧客とフラットな関係を築くべきだ、というのは同感です。難しいんですけどね」。昨年(2022年)、「品質不正」に関する講演をした際のことだ。受講者と名刺を交換する際、ある車載部品メーカーの人にこう言われた。「難しい」という前提付きでも「同感」と言われるのは予想していなかったので、実は少し驚いた。
製造業界で品質不正が多発する理由の1つに、納期やコストに対する顧客の無理な要求を拒否できない状況がある。製品のメーカーもティア1もティア2もフラット(対等)な関係を築ければ、品質不正を防ぐ契機になるのではないか――。この仮説はあくまで理想であり、製造現場に関わっている人からは「現実味がない」と突き放されるのを覚悟の上で話したので、「同感」と言われて驚いたのだ。
ここ最近、品質不正について講演する機会が何度かあった。その際、受講者との立ち話や懇親会でのやり取りの中で発見したり、改めて考えさせられたりすることが少なからずあった。その幾つかをご紹介したい。