記者として取材を始めて30年以上が経過しているが、取材中にこれほどガン見された(じろじろ見られた)と感じたのは初めてだ。ただ残念ながら?ガン見されているのは、部屋の中で取材をしている記者ではない。部屋の外に駐められている自動車と、駐車スペースに面したドアの脇に設けられた小さな扉、いわゆる猫の扉に、前を通る人が熱い視線を送っているのだ。
東京都八王子市にあるJR八高線の北八王子駅近くには、多数のメーカーが施設を構えている。そのうちの1社が米Keysight Technologiesの日本法人であるキーサイト・テクノロジー。同社の施設は北八王子駅の東側すぐの場所に位置する。玄関前には訪問者向けの駐車スペースが複数設けられている。この駐車スペースは車路を挟んで、建物の反対側にある。
一方、ガン見対象の駐車スペースは、昨年下期に、建物側にある芝生に新設されたものだ。芝生はそのままで、駐車スペースの境界を表わす白いブロックと、黄色い車止めが設置された。どちらもそれほど目立たないので、少し離れたところからだと、芝生に自動車が止まっているように見える。これがガン見された理由の1つと思われる。
もう1つのガン見対象である猫の扉は、取材した部屋から、芝生の駐車スペースへ出るドアの脇にある。その扉は普段は閉じられている。取材の際には、その扉が開けられて、ピンクのドーナツ状のクッション材の中心には太いケーブルが通されていた。この状態を初めてみる従業員は多いはずだ。この記事のタイトルの答えは、猫のための扉ではなく、「ケーブルを通すための扉」なのだ。