全2031文字
PR

 世の常だが、それほど重要でもないのに大事に扱われるものもあれば、本当は重要なのにないがしろにされるものもある。製造業では、例えば生産技術が後者といってよさそうだ。

 生産技術の地位が低いのは、今に始まった話ではない。筆者が改めてそのことを感じたのは、日立製作所が2019年に日米のロボット・システム・インテグレーション(ロボットSI)事業者を買収して同事業に参入する狙いを聞いたときだ。同社によれば、自動車メーカーや自動車部品メーカーは今後CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリングサービス、電動化)対応に追われ、生産技術部門にこれまでのようなリソースを割けなくなる可能性があるというのだ。同様の傾向は、自動車業界に限らず製造業全般で進むと日立製作所は見ている。

関連記事:脱製造業を進める日立、それでもロボットに本気の理由

 より正確にいえば、日立製作所が日立ハイテクノロジーズの完全子会社化に向けてTOB(株式公開買い付け)を実施するという最近の発表を受けて、筆者はロボットSI事業の話を思い出し、生産技術に思いをはせた次第である。日立ハイテクは、医用機器や半導体製造装置を手掛けている。「Lumada(ルマーダ)」を柱とするデジタル事業に傾倒する日立製作所が、生産技術と密接な関係があるロボットSIや半導体製造装置といったものづくり事業をあえて取り込むのは、やはりこのあたりの分野が手薄になると考えているからだろう。

ファブレスでも生産技術は重要

 日立製作所の戦略は説得力があるが、筆者が心配するのはそのユーザーとなる製造業だ。“用法・用量”を守って利用する分には助けになるかもしれないが、依存が過ぎれば技術力やコスト競争力の低下を招きかねない。製造業では、ブランドやビジネスモデルだけで高利益率を実現するのは難しい。同じようなものを同じぐらいの価格で売っていても各社で利益率が異なるのは、生産性を考慮した設計(DFM:Design for Manufacturing)や購買・調達なども含めた生産技術力に差があるからだ。実際、ファブレスで知られていても生産技術を重視している企業は少なくない。ファブレスだから利益率が高いのではなく、生産技術力が高いから利益率も高いのだ。

 その代表格といえるのが米アップル(Apple)である。同社は「iPhone」や「MacBook」を自社で生産していないが、その生産に使う加工技術や設備に関しては綿密に自社で管理している。少し前の分析だが、製造業の設計革新や原価管理に詳しいプリベクト代表取締役の北山一真氏は、アップルについて、「利益の源泉となる固定費部分だけを管理し、変動費部分は外注している」と指摘する。そして、固定費部分に当たる加工設備や金型などに積極的に投資し、高利益率を実現しているのである。

関連記事:「iPhone」がもうかる本当の理由

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

日経クロステック登録会員になると…

新着が分かるメールマガジンが届く
キーワード登録、連載フォローが便利

さらに、有料会員に申し込むとすべての記事が読み放題に!
日経電子版セット今なら2カ月無料