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 巣ごもり需要の追い風で、ゲーム業界は活況にある。ゲーム機を手掛ける米Microsoft(マイクロソフト、MS)と任天堂、米Sony Interactive Entertainment(SIE、ソニー・インタラクティブエンタテインメント)といった大手プラットフォーマー3社の業績はすこぶる好調だ。対照的に、鳴り物入りで参戦した米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)や米Google(グーグル)といった米大手IT企業のゲーム事業は苦戦している。豊富な資金を持つ米IT大手が、MSやソニー、任天堂の地盤を崩せない理由は何か。記者は「開発者視点」と「企業文化」にあると見ている。

任天堂とSIE、Microsoftそれぞれのゲーム機のロゴ
任天堂とSIE、Microsoftそれぞれのゲーム機のロゴ
(出所:任天堂、SIE、Microsoft)
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 最近ではAmazonとGoogleのゲーム事業が振るわないという米報道が目立つ。それは、自社のゲーム開発スタジオを閉鎖したり、開発中のゲームの開発を中止したりしているからである。例えばGoogleは2021年2月、自社でのゲーム開発から退くことを発表した。Amazonは、12年に自社のゲーム開発部門(スタジオ)「Amazon Game Studios」を立ち上げた。その後、著名ゲーム開発者を雇い入れたものの、鳴り物入りで開発を始めた大型ゲームの開発中止や延期が相次いだ。例えば、20年5月に対戦型ゲーム「Crucible」をリリースしたが、すぐにベータ版に戻り、10月に開発を中止している。自社で独自ゲームを開発しない、あるいは運営がうまくいかず中止する事態は、ゲームプラットフォーマーとして致命的である。新参者であるGoogleやAmazonではなおさらだ。

 ゲーム機やゲームの配信サービスといったゲームプラットフォーム事業を成功させるためには、自社プラットフォームだけでプレーできるウリとなるゲームが不可欠だ。一方で、第三者(サードパーティー)のゲーム企業は開発費を回収して利益を出すため、さまざまなプラットフォームにゲームを出したい。人気ゲームを抱える企業ほど立場が強く、特定のプラットフォームだけを通じて人気ゲームを販売することはまれだ。そこで、プラットフォーマー自らが、ゲーム開発スタジオを構えて、独自ゲームを開発してユーザーを呼び込む。それが成功してユーザー数が増えると、大手ゲーム企業が人気ゲームシリーズの続編や、人気ゲームを他のプラットフォームに先んじて出してくれるようになる。

 任天堂は古くからこの方策を取る。新型ゲーム機を出した際には、自ら人気ゲームを発売し、販売台数を増やしてある程度ゲームファンに浸透してから、サードパーティーがゲームを出す、という流れだ。任天堂に比べて後発のSIEやMSも今や同様で、自社のゲーム開発スタジオの強化を続けている。買収にも積極的で、例えば20年9月には、MSが75億米ドルという巨額で、米国の大手ゲーム企業Bethesda Softworks(ベセスダ・ソフトワークス)の親会社である米ZeniMax Media(ゼニマックス・メディア)を買収すると明らかにした。SIEも継続的に買収を実施している。自社製にこだわる任天堂も、約9年ぶりのゲーム開発企業買収に踏み切った。21年1月に、同社はカナダNext Level Games(ネクスト・レベル・ゲームズ、NLG)を買収すると明らかにしている。

Bethesdaが手掛ける主要なゲーム
Bethesdaが手掛ける主要なゲーム
(出所:Microsoft)
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 ゲーム開発スタジオの閉鎖やゲーム開発を中止したGoogleやAmazonとは対照的だ。なぜ、両社のゲーム事業は振るわないのか。