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 「実はコアなサッカーファンほど試合を楽しんでいない」と聞いたら驚くだろうか。こんな意外な結果がパナソニックの取り組みで明らかになった。

 同社は最近、スポーツビジネスに力を入れている企業の1つだ(関連記事:スポーツの熱狂の裏にテクノロジー、ソニーやパナが狙う新市場)。スポーツ事業のノウハウ獲得の一環として、同社は傘下のスポーツチームでさまざまな取り組みを行っている。その1つとして日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)に所属するガンバ大阪と共に行ったのが、設置したカメラによる観客の満足度調査である。従来のアンケートのように個人の主観によらず、ある特定の指標から算出された満足度をエリアごとに時系列で取得できる(図1)。

図1 パナソニックが調査したガンバ大阪の試合におけるエリアごとの観客の満足度の時間変化
図1 パナソニックが調査したガンバ大阪の試合におけるエリアごとの観客の満足度の時間変化
(図:パナソニック)
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 図1は2019年9月14日、「パナソニックスタジアム 吹田」で開催されたガンバ大阪の試合で、スタジアムのエリアごとに計測した顧客満足度をグラフにしたものだ。青い線はメインスタンドのホーム側の下層エリア、赤はメインスタンドアウェー側の下層エリア、緑はメインスタンドの上層エリアの観客の満足度をそれぞれ示している。

 実は、この観戦エリアによってそれぞれファン層が異なる。青い線のエリアには、若いときはゴール裏で声を出して応援していたような熱心なファンが多い。そのチームの観戦歴が長い、コアな層が座るエリアといえる。赤線のエリアは、年に数回観戦に来るようなミドル層、緑線のエリアには初めて観戦に来たようなライト層が多い。

 グラフを見ると、試合の前半と後半を通してコア層の満足度はほぼ平均以下だ。ゴールした時こそ満足度は大きいが、それでも他の2エリアのファンより満足度は低い。結局、コア層のファンが1番盛り上がったのは、試合前のチーム応援と試合後の勝利の儀式のみ。一般の人からすれば、コア層のファンは何が楽しくてスタジアムに通っているのか理解できないだろう。

 実は筆者も、Jリーグの試合でコア層が座るエリアで毎試合応援しているファンの1人だ。自分ではコア層とは思っていないが、Jリーグ関係者に「あなたはコア層です」と断言されたので、客観的に見ればコア層なのだろう。

 そんな筆者だが、この結果には共感している。コア層はチームの置かれた状況に感情が左右されるからだ。オリンピックやW杯のような国際試合の真剣勝負で日本チームを応援する気持ちに近いかもしれない。筆者の観戦時の様子を振り返って見ると、試合中は常に不安で緊張している。応援しているチームがゴールを決めても2点差くらいでは、いつ追いつかれるかと常に緊張している。1点差で迎えた後半ロスタイム(追加タイム)の相手チームのコーナーキックなどは生きた心地がしない。振り返って見ると、試合中に笑顔になった時間はゴールが決まった直後くらいだ。