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触れるVR技術はエンターテインメントだけではなく医療などの分野にも応用が期待される。写真は手術のシミュレーションをする装置(写真:日経クロステック)
触れるVR技術はエンターテインメントだけではなく医療などの分野にも応用が期待される。写真は手術のシミュレーションをする装置(写真:日経クロステック)
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 仮想現実(VR)の世界で架空のキャラクターや乗り物に触れたらどれほど楽しいか――。誰しも1度はこのように考えたことがあるだろう。世の中ではそのような夢の技術の開発が進んでいる。慶応義塾大学発スタートアップであるモーションリブ(川崎市)の「リアルハプティクス」だ。

 リアルハプティクスは、物を触ったときの感触を再現したり、ロボットに繊細な動作を伝達したりできる技術である。実際に物を触ったときの感触をデータとして蓄積し、後から再現できるのが特徴だ。例えば、猫を触ったときの柔らかい感触や野球バットでボールを打ったときの衝撃など、さまざまな触覚をVRで体験できるようになる。

 モーションリブは、リアルハプティクスを活用してVR上で動物に触れる「新宿感触動物園 HapticZoo」を開発した。2023年2月23~24日に、一般客が体験できるHapticZooのフィールドテストを新宿中央公園(東京・新宿)で実施する予定だ。タカが飛び乗ってきた衝撃や、ワニの尻尾やカバのおなかを触ったときの感触を体験できるという。ワニを触ることなどまず人生で経験することはないので、記者はとても興味がある。

VR上の「感触動物園」で触れる動物たち(写真:モーションリブ)
VR上の「感触動物園」で触れる動物たち(写真:モーションリブ)
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 動物アレルギーや住宅環境といった事情でペットを飼えない人にとっても、疑似的にでも動物とふれ合う機会が得られたら癒やしになるのではないだろうか。将来メタバースが普及した時代に、仮想空間でペットを飼ってふれ合うことが一般的になるかもしれない。

 モーションリブ代表取締役最高経営責任者(CEO)の溝口貴弘氏は、「データをうまく活用すればライオンと綱引きで勝負できるようになる」と技術の応用を紹介する。動物の動きや感触を伝える方法は世の中にないため、「新しい動物図鑑を作るような感覚」だという。ちなみに動物園で大型動物のデータを収集するときは、動物の気まぐれにとても苦労したそうだ。

モーションリブ代表取締役CEO(最高経営責任者)の溝口貴弘氏(写真:日経クロステック)
モーションリブ代表取締役CEO(最高経営責任者)の溝口貴弘氏(写真:日経クロステック)
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 今回は1自由度(1方向)の単純な動きしかデータは収集していないという。動きを計測するモーターの数を増やせば複雑な動きをデータ化できるが、それを再現する装置も大掛かりになり、気軽に楽しめなくなるからだ。溝口氏は「将来はメタバースなどへの応用も考えられる。どのようなデバイスがより適しているか利用者の声を聞きながら検討していきたい」と語る。