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 基幹系システムの構築は多くの企業が実施済みで、もはや刷新需要しかない。ならば新しい分野であるDXやAIなどに人員をシフトしよう――こう考えるITベンダーが多いのは間違いない。その結果、基幹系を手掛けるエンジニアの供給が、需要を大幅に下回るようになったのだ。

 梅田社長や、ほかの基幹系システム構築専門のITベンダーに話を聞くと、皆が口をそろえて「基幹系を担うITエンジニアが高齢化している」と話す。2000年問題への対応やその後のERP導入ブームの頃に新人だったITエンジニアが、そのまま基幹系刷新プロジェクトを手掛けている状況だという。

 一方で基幹系システム構築へのITエンジニアの新規参入はほとんどない。前述のように、ITベンダーは新規分野に人員を充当しており、以前からある基幹系システムを手掛ける部門になかなか若手を投入しないからだ。そして若手ITエンジニアにとっても、「技術的なイノベーションの少ない基幹系システムの構築は、魅力的ではない」(中堅ITベンダーのERPコンサルタント)のだ。

2025年の崖が越えられない

 基幹系システムの刷新を手掛ける部署に新人エンジニアが配属されたとしても、「基幹系システムの構築を習得するのは難易度が高く、時間がかかる」と梅田社長は話す。技術や製品だけでなく、業務にも精通する必要があるからだ。

 会計分野を得意とする基幹系システム構築のITエンジニアになるのであれば、ERPパッケージの製品アーキテクチャーなどの技術的側面だけでなく、IFRS(国際会計基準)などの新しい会計基準の動向を追い続ける必要がある。生産管理であれば、組み立て型やプロセス型といった生産方式の違いが分かり、部品表への展開やMRP(資材所要量計画)の設定など、生産現場一筋の担当者たちと話し合う知識が求められる。

 そして業務知識の習得には時間がかかる。業務知識は現場でユーザー企業の担当者の話を聞きながら身に付けていくのが効率的だ。技術的な知識は、クラウドサービスが普及し、自宅のPCからでもアクセス可能なサービスが増えた結果、時間さえあれば習得できる環境が整ってきた。だが業務知識については、現場に入ってユーザー企業の担当者から少しずつ学び取るしかない。

 こうして若いITエンジニアから敬遠された結果、基幹系システムの構築に携わるITエンジニアは今後も減り続けるだろう。だが、どのようにDXが進んだとしても、企業から基幹系システムがなくなることはない。AIを業務に生かすという観点では、企業のヒト・モノ・カネのデータを押さえる基幹系システムがますます重要になるだろう。

 これから2025年にかけては、SAPのERP「SAP ERP」のサポート切れに伴う基幹系システム刷新の需要が急速に高まると見られている。基幹系システムの構築を手掛けるITエンジニアの不足はますます深刻化しそうだ。

 今から5年後、DX推進のために基幹系システムを刷新したくても、刷新できないユーザー企業が増えそうだ。経済産業省は話題になった「2025年の崖」のリポートで、「DXを阻害する存在」として旧来型の基幹系システムを挙げていた。だがこれからは、ユーザー企業の意思よりもITベンダーのエンジニア不足の問題で、崖を乗り越えられない可能性が高くなっている。