全2895文字
PR
4/1朝まで
どなたでも有料記事が読み放題「無料開放デー」開催中!

 「2025年問題」が2年間延びて嬉しいのは誰か。欧州SAPは2020年2月4日(現地時間)、ERP(統合基幹業務システム)パッケージ「SAP ERP」の標準サポート期限を従来の2025年末から2027年末に延期すると発表した。

 これにより「標準サポート期間が終了する2025年末までに、SAP ERPのユーザー企業が新しいERPであるS/4HANAに移行しなければならない」というSAPの「2025年問題」は「2027年問題」に変わった。日本のSAP ERPユーザーは2000社あるとも言われている。S/4HANAに移行済みの企業はまだ一部だ。

 半数以上の企業がS/4HANAへの移行を検討したり計画したりしていると見られる現段階で、サポート延長は朗報のように思える。SAPが説明する通り、S/4HANAに移行する際の「ユーザー企業の選択肢が増える」のは間違いない。

 一方でまったく朗報ではない部分もある。それは今回の発表により「SAP ERPからS/4HANAに移行するプロジェクトは、基幹系システムのDXを目標に掲げなければならない」という状況にSAPのユーザー企業が追い込まれたからだ。

「新規導入推し」のSAP

 SAP ERPからS/4HANAへの移行方法は大きく2つある。1つはSAP ERPの機能を大きく変えずにそのままS/4HANAに移行するバージョンアップに近い方法、もう1つはS/4HANAをまったく新規導入する方法である。

 前者のメリットは業務プロセスの見直しといった工程が発生しないため、短期間でプロジェクトを遂行できることだ。その分コストも抑えられる。一方の新規導入に近い方法は、業務の現場を巻き込んだ大規模プロジェクトになる可能性がある。

 SAPはS/4HANAへの移行時に、新規導入を勧めている。バージョンアップに近い前者の導入方法を選ぶと、基本的にはSAP ERP導入時の業務プロセスやデータを引き継ぐ。SAP ERPの前バージョンの「R/3」から導入している企業であれば、2000年前後の業務プロセスをそのまま引き継ぐことになるからだ。現時点で基幹系システムを刷新すれば2030年くらいまでは使い続けるだろう。

 「30年変わらない基幹系システムでいいのか」。SAPはこの課題をユーザー企業に問いかけ、新規導入型の刷新を「推して」いる。新規導入の際には当然、DXを前提にした基幹系システムであるべきだ、というのがSAPの主張だ。

 DXを前提にした基幹系というと幅が広いが、デジタル化したビジネスを支援できるように高速にデータ処理を実行し、柔軟にクラウドサービスと連携でき、AI(人工知能)活用して業務を効率化する、といったことをSAPは基幹系のDXとしている。2018年11月に買収した米クアルトリクスで取得できる顧客や従業員のアンケートデータなどを活用したり、経費精算のコンカーなどのSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を活用したりするためには、S/4HANAの新規導入が欠かせないということだ。