年の瀬が迫った2017年12月18日、筆者はベトナムの商都ホーチミンから郊外に向かっていた。道路の両側には、建設中の高層マンションが立ち並ぶ。同国不動産最大手のビングループ(Vin Group)が分譲マンションを盛んに売り出しているらしい。経済成長が続く新興国の活気が伝わってくる。
ベトナムを訪問するのは3年ぶりのことだ。道路のほとんどをバイクが埋め尽くしていた当時と比べ、自動車の占める割合が増えているように感じる。
冬に来たのは初めてで、市街はクリスマスムード一色。仏教国のイメージが強いが、祝い事が好きな点は日本と同じお国柄なのかもしれない。知らなかったベトナムの一面を見た気分になる。
筆者がベトナムに来たのは、オフショア開発の取材をするためだ。尖閣諸島問題などで日中関係に緊張が走った2013年ごろ、ベトナムはチャイナプラスワンの最有力候補として脚光を浴びていた。あれから4年。取材を進める中で随所に垣間見えたのが、IT業界の新しい潮流だった。
イメージと違う自動運転車が登場
冒頭で筆者が向かっていた目的地は、ベトナムIT企業FPTソフトウェアのホーチミン拠点だ。そこには楽しみにしていたものがあった。同社が開発した自動運転車である。同年5月に親会社であるFPTコーポレーションのチュオン・ザー・ビン会長にインタビューした際、「10月から自動運転車を走らせるよ」と意気込んでいた。
ホーチミン拠点に着き、自動運転車の開発担当者にひととおり話を聞いた後、いよいよ自動運転車に乗せてもらう運びとなった。建物を出て案内された拠点内の道路に止めてあった軽自動車がこれだ。
外観に特に変わったところはない。ただ後部座席に乗り込んでみるとやや戸惑った。イメージしていたものとかなり違っていたからだ。