新卒で入社するITエンジニアが基幹系システムの開発部署に配属されることはほとんどなくなった。若手はAI(人工知能)関連やWebフロント系など、イノベーティブで未来のある分野の開発案件に投入され、枯れた基幹系システムを担当するITエンジニアは高齢化するばかりだ――。
ERP(統合基幹業務システム)パッケージや基幹系システムを取材するなかで、複数のITベンダーからこんな話を聞いた。基幹系システムの構築にERPパッケージを採用することがやっと当たり前になったという話題とともに、人材難の話も出てきた。
ITベンダーで基幹系システム構築に関わるITエンジニアの話を総合すると、ERPの導入をはじめとした基幹系システム構築の主力となっているITエンジニアやコンサルタントは「40歳前後の世代が中心」だそうだ。そして「このままだと10年後くらいには、基幹系システムを支えるITエンジニアがいなくなりそうだ」という。中途採用したくてもITエンジニア不足の時代だ。「将来がない基幹系システムの分野にあえて挑戦するような中堅や若手のITエンジニアはいない」と取材先はこぼした。
この話を聞いて、「企業経営を支える基幹系システムを担当するITエンジニアが不足したままで、企業経営は成り立つのだろうか」と心配になった。同時に「本当に基幹系システムは将来がない分野なのか」とも思った。
あらゆる企業に基幹系は存在する
基幹系システムの定義は様々あるが、「企業の基本的な要素であるヒト・モノ・カネを管理し、企業経営を支えるシステム」とここでは定義したい。製造業にとっては生産管理システムを指す場合もあるし、流通業では販売管理システムを指すケースもある。どのような業種・業態であっても、必ず企業内に存在するのが基幹系システムだ。
多くの企業が基幹系システムのライフサイクルを10年以上と考えている。ヒト・モノ・カネを管理するという観点では基幹系システムが担う業務は変化が少なく、頻繁に刷新する必要がないというのが大きな理由だ。
基幹系システムは企業の主力業務を支え、経営成績を示す財務諸表に直結するため、安定稼働が欠かせない。基幹系システムの刷新で安定稼働が損なわれでもして、業務や経営に悪影響が出る事態を避けたいという考えもある。
こうして基幹系システムは、今どきのAIやIoT(インターネット・オブ・シングズ)、Webサービスといった、ビジネスと直結して日々新しい機能をリリースするシステムと異なり、大きな機能変更もなく、塩漬けになりがちだ。基幹系システム関連を長年取材して、記者も冒頭のように基幹系システムが「枯れていて」「将来がない」という評は正しいと感じていた。
基幹系にもデジタル化の波が来る
ところがそんな「塩漬け上等」の基幹系システムに今、再構築の波が押し寄せようとしている。最近、いくつかの兆候を感じるようになった。