デジタル化を阻む基幹系のしがらみ
兆候はあるものの、企業が本当に基幹系システムの再構築に相次ぎ着手するのか。それは今後のデジタル化の進展に加えて、基幹系システムにまつわるしがらみをユーザー企業がどれだけ解消できるかにかかっている。
前述したように基幹系システムの再構築は、下手を打てば企業の経営数値を変えてしまう可能性がある。仮に刷新に失敗したら、全社的に業務が止まり大きな問題になるかもしれない。「業務に大きな改善も無く、投資と危険性だけ高まる」。こう身構えられてしまったら、これまでのシステムに馴染んでいた現場から反対の声が上がりかねない。
基幹系システムは多くの場合、ヒト・モノ・カネの「カネ」に密接にからむため、J-SOX(内部統制報告制度)の対象になっているケースも多い。アプリケーションのロジックだけでなく、インフラの運用体制などもJ-SOXでは問う。再構築の際には運用面の見直しなども必要になり、投資は億円単位に膨らむケースも珍しくないだろう。
そして何よりも、過去数十年使い続けてきたアプリケーションを捨てるのはとても勇気が要る。構築や運用保守を担当していた長年のベンダーとの付き合いをやめることにつながるかもしれない。
デジタル側の新システムと異なり、基幹系システムはしがらみだらけだ。しがらみを解消し、デジタル化の推進を優先できるのか。デジタル化に乗り遅れまいとすれば、ユーザー企業は今後数年間で基幹系システムを再構築するのか塩漬けするのかを決断しなければいけない。
先日、ERPベンダーがAI関連機能の記者会見で「(基幹系システムは)地味な分野ですが、進化もしている」と強調していた。ERPベンダー自らが地味な分野と言うのだから、基幹系システムは本当に地味な分野なのだろう。
ただ、こうも考えられる。地味で古く、この数十年間変わらなかったからこそ、これから猛烈に生まれ変わる可能性を秘めている、と。生まれ変わった基幹系システムは新技術で武装し、将来性あふれているものになっているに違いない。
記事公開当初、ワークスアプリケーションズの社名に誤りがありました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2018/03/05 12:40]