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 開幕まで残り約2年となった大阪・関西万博の会場整備が、正念場を迎えている。2025年日本国際博覧会協会が発注する建築工事の入札で、不落・不調が相次いでいるのだ。

 本来であれば、開幕2年前の2023年4月にも敷地を引き渡して、順次着工する計画になっている。万博の開幕日が変わらない以上、このまま入札不成立が続けば、今後受注者が現れたとしても、むちゃなスケジュールを強いることになる。

2025年日本国際博覧会協会が2022年10月に公開した大阪・関西万博会場の模型。縮尺は1000分の1で、大きさは縦1.9m、横1.8mある(出所:2025年日本国際博覧会協会)
2025年日本国際博覧会協会が2022年10月に公開した大阪・関西万博会場の模型。縮尺は1000分の1で、大きさは縦1.9m、横1.8mある(出所:2025年日本国際博覧会協会)
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 協会は23年2月24日、1回目の入札で不落だった「迎賓館」の再入札について、大林組・矢作建設工業共同企業体と日建設計が約34億円で落札したと発表した。22年12月以降、建築工事の入札が6回続けて不成立に陥る悪い流れには歯止めをかけたが、これだけで事態が好転したとは言い難い。他の建築工事の入札状況を見ていこう。

 万博の開・閉会式などを実施する予定の「大催事場」の建築工事は、再入札でも決まらなかった。協会は22年7月に予定価格を約48億円に設定して1回目の入札を公告した。しかし誰も入札者がいなかった。そこで映像や音響といった舞台設備の工事を新たに加え、予定価格を1回目の約1.5倍に相当する約71億円まで引き上げ、22年12月に再公告した。それでも予定価格の範囲内での応札者が現れなかった。

 3回目の入札について協会は、「再々公告の時期はまだ決まっていないが、急ピッチで準備を進める」としている。2回連続で不成立になった原因については、「大催事場はデザイン性を重視した建築物であり、屋根などに使う部材の製作や施工の難易度が高い。資材の高騰など様々な経済状況の変化が、建築工事の入札に影響している」との見解を示した。

2025年日本国際博覧会協会が発注する大阪・関西万博の建築工事の入札で不落・不調が相次いでいる(出所:2025年日本国際博覧会協会)
2025年日本国際博覧会協会が発注する大阪・関西万博の建築工事の入札で不落・不調が相次いでいる(出所:2025年日本国際博覧会協会)
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 大催事場の基本設計は、伊東豊雄建築設計事務所(東京・渋谷)が手掛ける。21年10月の公募型プロポーザルで選定された。外観は岡本太郎の「太陽の塔」をほうふつとさせるデザインだといい、黄金に輝くパラボラ状の大屋根は宇宙との交信をイメージしたものだ。

 協会は、「基本設計者のデザインコンセプトやイメージは変えず、建物の軽量化や基礎構造の見直しで建設コストを削減できないか検討している」と説明する。3回目の入札の予定価格は、「現時点では回答できない」としつつも、「基本的には前回の予定価格(約71億円)を守りたい」との考えを示す。