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 「歯科診療所はコンビニエンスストアよりも数が多い」――。これはよく使われる表現で、まごうことなき事実である。しかし、初めて聞くと意外に思う人も多いのではないか。記者もその1人だ。言われてみれば確かに駅前などでよく見かけるが、そうは言ってもコンビニよりは少ないのではないか、そう感じてならない。この事実と感覚の食い違いは何に由来するのだろうか。

日本の歯科診療所はコンビニより1万施設以上も多い
日本の歯科診療所はコンビニより1万施設以上も多い
(出所:123RF)
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 日本フランチャイズチェーン協会の2022年1月度「コンビニエンスストア統計調査月報」によると、全国のコンビニ数は5万5956店。一方の歯科診療所の数は、厚生労働省の「医療施設動態調査(令和3年11月末概数)」によると6万7886施設とされている。数の上では歯科診療所のほうが1万以上も多いことになる。

 こうした明白なデータがある以上、日本全体で歯科診療所がコンビニより数が多いことは疑いようもない。一方で、もし歯科診療所とコンビニの分布に極端な地域差などがあれば、「実は記者の身の回りにはコンビニのほうが多かった」「自分の感覚は正しかった」ということが証明できるかもしれない。そこで自分を納得させるべく、数字を漫然と眺めるだけでなく手を動かして多少の分析を試みた。

基本的な分布パターンはほとんど同じ

 まず手始めに、コンビニと歯科診療所の都道府県ごとの数、およびそれぞれの人口比を調べた。コンビニはセブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート、ミニストップ、セイコーマートの5種類のチェーンを対象とし、各社がHPで公表している都道府県別の店舗数を収集した。歯科診療所については、前述の厚労省による「医療施設動態調査(令和3年11月末概数)」に都道府県ごとの数字もまとめられている。人口は2020年10月1日現在の政府統計による「人口推計」を用いた。

 コンビニと歯科診療所の数を、Excelのマップグラフ機能を用いて描画したのが次の図である。結果はいずれも東京都を筆頭として首都圏、北海道、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県などが濃く色づけされており、大型の都市部に多く分布していることが分かる。両者の分布パターンに明白な違いは見られない。以下すべてコンビニはピンク色、歯科診療所は青色で表現を統一する。

コンビニ(左)と歯科診療所(右)の数を都道府県別に色分けして示したコロプレス図。濃い色は数が多いことを示す
コンビニ(左)と歯科診療所(右)の数を都道府県別に色分けして示したコロプレス図。濃い色は数が多いことを示す
(コンビニ各社の店舗情報、厚労省「医療施設動態調査」に基づいて日経クロステック作成)
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 次に人口に対する割合を見てみる。コンビニは人口1万人当たり3.3~5.8店舗、歯科診療所は3.8~7.6施設という結果になった。コンビニと歯科診療所で色分けパターンが異なることから、単純に人口の規模で店舗/施設数が決まっているわけではなさそうだ。人口当たりのコンビニ数が最も多いのは北海道という結果から察するに、特にコンビニについては面積やアクセス条件なども大きく影響していると考えられる。

人口1万人当たりのコンビニ(左)と歯科診療所(右)の数を都道府県別に色分けして示したコロプレス図。濃い色は数が多いことを示す。人口当たりのコンビニ数は北海道が多い
人口1万人当たりのコンビニ(左)と歯科診療所(右)の数を都道府県別に色分けして示したコロプレス図。濃い色は数が多いことを示す。人口当たりのコンビニ数は北海道が多い
(コンビニ各社の店舗情報、厚労省「医療施設動態調査」、政府統計「人口推計」に基づいて日経クロステック作成)
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 しかしこれらの結果を見ても、歯科診療所がコンビニより多いという事実をすんなり受け入れることはできない。そこで、都道府県ごとにまとめた数字を使うのではなく、各店舗/施設を直接地図上にマッピングすることを思いついた。