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 新型コロナウイルスの感染拡大に関連し、マスクだけでなく、トイレットペーパーが店頭から姿を消した。SNSなどで「トイレットペーパーが不足する」といった情報が広がったためだ。

 これを受けて厚生労働省と経済産業省は2020年3月3日、需要を満たす十分な供給量と在庫を確保できているとし、落ち着いた行動を取るよう消費者に呼びかけた。日本家庭紙工業会も同年3月2日、「トイレットペーパーの平均使用量」などを示し、買い占めや転売などをしないよう消費者に理解と協力を求めた。

経済産業省の公式アカウントのツイート。トイレットペーパーの配送状況などをウェブサイトやツイッター上で公開し、落ち着いた行動を取るよう消費者に呼びかけた(資料:経済産業省)
経済産業省の公式アカウントのツイート。トイレットペーパーの配送状況などをウェブサイトやツイッター上で公開し、落ち着いた行動を取るよう消費者に呼びかけた(資料:経済産業省)
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 “デマ”が拡散したことで、本当に必要な人の元に供給されないのは問題だが、自宅のトイレットペーパーが尽きてしまうことに不安を感じる心情は、理解できる。トイレットペーパーを巡る騒動からは、我々にとってトイレで安心して用を足せる環境がいかに重要か、思い知らされる。

 改めて考えてみると、日常でも「トイレ問題」で切羽詰まった状況に陥ることは多い。例えば、「今すぐトイレに行きたい!」と急いだ先に、長蛇の列。誰にでもそんな経験があるだろう。筆者の場合、花見や花火大会などのイベント時を筆頭に、外出先で「いつトイレに行っておくか」は深刻な問題だ。トイレの混雑具合を気にするストレスは、ばかにならない。

 なぜトイレの行列はなくならないのか。日経アーキテクチュアの20年2月13日号では、「トイレが…足りない!」と題し、トイレ不足とその対策について取材した。

日経アーキテクチュア2020年2月13日号のコラム「『想定外』の教訓」。トイレの行列がなくならない要因やその対策例を紹介した(資料:日経アーキテクチュア)
日経アーキテクチュア2020年2月13日号のコラム「『想定外』の教訓」。トイレの行列がなくならない要因やその対策例を紹介した(資料:日経アーキテクチュア)

 トイレ不足で改修に踏み切った東京都豊島区の「南池袋公園」やJR新宿駅直結の超巨大バスターミナル「バスタ新宿」(東京都渋谷区)については同コラムをお読みいただくとして、本稿ではトイレの行列がなくならない原因について説明したい。

(関連記事:トイレが…足りない!

 取材を進めてみると、次のような原因があることが分かった。

(1)建物の立地や特性に合わせた適正な数が計画されていない。

(2)男女比などの属性と、それに応じて利用者が求める機能が計画に織り込まれていない。

(3)便器などの配置や動線計画が整理されていない、あるいは荷物をかけるためのフックや洗浄ボタンの位置などが分かりにくく、個室内での動作がスムーズでない。

 つまり、「数」「属性」「使い勝手」の3つだ。

 利用者の数と属性を、トイレをつくる前に正確に見積もるのはかなり難しいが、設計者や施設の管理者はなるべく実態に近づける努力をすべきだ。これまで200以上のトイレを設計した実績がある設計事務所ゴンドラの小林純子代表は、次のように指摘する。「改修なら既存の施設を調査し、利用実態を把握することが欠かせない。新築時も類似施設を調べたうえで、利用者数などを見積もるのが理想的だ」