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 地方銀行の勘定系システム共同化が転機を迎えている。きっかけは広島銀行が日本IBMからNTTデータ陣営に乗り換えることを決めたことだ。今後、地銀システム共同化の勢力図はどう変化していくのか。伏兵になりそうなのが、日本IBMの「じゅうだん会」とNTTデータの「STELLA CUBE」だ。

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 記者の見立てを紹介する前に、まず地銀システム共同化の現状を整理しておきたい。現在は大手ITベンダーが支援する形で10以上のグループが乱立している。その中で存在感を放つのが、日本IBMとNTTデータの各陣営である。両社がそれぞれ支援するシステム共同化の参加行を合計すると、採用行数のシェアは6割超に達する。

 日本IBMは千葉銀行が中心の「TSUBASA基幹系システム」、三菱UFJ銀行のシステムをベースにした「Chance地銀共同化システム」、長野県の八十二銀行などが参加する「じゅうだん会」、ふくおかフィナンシャルグループと広島銀行(離脱を表明済み)が共同運営する「Flight21」という計4グループを支援している。預金量(予定を含む)という観点でみると、上からTSUBASA、Chance、じゅうだん会、Flight21という順番になる。

 NTTデータは京都銀行などが参加する「地銀共同センター」、横浜銀行が中心の「MEJAR」、第二地銀が多い「STELLA CUBE」と「BeSTAcloud」という主に4陣営を手掛けている。同じく預金量でみると、トップが地銀共同センターで、MEJAR、STELLA CUBE、BeSTAcloudが続く構図だ。

地銀向けの主なシステム共同化
地銀向けの主なシステム共同化
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「八十二銀行がどう判断するか」

 地銀システム共同化の今後を占う上で注目を集めるのが、「広銀ショック」に直接関わるFlight21とMEJARだ。業界関係者は規模で勝る地銀共同センターやTSUBASAの動向にも目を光らせている。もちろん、記者自身もこうした陣営の動きに注目しているが、伏兵になるとみているのが、じゅうだん会とSTELLA CUBEという日本IBMとNTTデータそれぞれの3番手グループだ。

 なぜこの2陣営に目を向けるのか。確かにどちらも日本IBMとNTTデータが手掛けるシステム共同化の中で目立つ存在とはいえない。参加行は中小地銀が多く、規模的にそれほど大きくないからだ。しかし、両社が地銀システム共同化の改革を進めていく上で、じゅうだん会とSTELLA CUBEの判断は重要な意味を持つ。両陣営の選択が日本IBMとNTTデータの次世代戦略が構想通りの成果を出せるかどうかのカギを握っているからだ。

 日本IBMはここにきて「共同化の共同化」という構想を打ち出している。同社が支援する複数のシステム共同化をまたいで、システム基盤を共同利用する枠組みだ。関係者によると、日本IBMはTSUBASAやじゅうだん会などに同構想への参加を働きかけているという。

 実はTSUBASAは基幹系システムの共同化にこだわらず、FinTechなどの分野で連携を深める「TSUBASAアライアンス」という受け皿も用意している。同アライアンスの参加行は現在10行で、じゅうだん会のメンバーである武蔵野銀行や琉球銀行も名を連ねている。TSUBASAとじゅうだん会は重なり合っている部分もあり、連携強化に向けた下地はある。

 とはいえ、共同化の共同化の議論が本格化すると、規模で劣るじゅうだん会側に「TSUBASAに飲み込まれる」という警戒感が生まれても不思議ではない。前出の関係者は「(じゅうだん会を主導する)八十二銀行がどう判断するかがカギになる」と分析する。