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 対話型AI(人工知能)のChatGPTの勢いが止まらない。専門媒体にとどまらず、テレビの情報番組などでも取り上げられるほどだ。アクティブユーザー数は2023年1月末時点で1億2300万人に達したという。米Google(グーグル)が牛耳る検索を変革するとされるが、影響はそれだけにとどまらない。

ChatGPTにクラウドAIにおけるMicrosoft Azureの勝機を尋ねた結果。右は情報システムの専門家としての回答を促したもの(ChatGPTの学習モデルは2021年9月までのデータのため、直近の動向は考慮していない)
ChatGPTにクラウドAIにおけるMicrosoft Azureの勝機を尋ねた結果。右は情報システムの専門家としての回答を促したもの(ChatGPTの学習モデルは2021年9月までのデータのため、直近の動向は考慮していない)
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 「適用範囲は非常に広範囲。ホワイトカラーのほぼすべての仕事に影響を与える可能性があるだけでなく、ビジネスのやり方や前提も変えてしまうほどの破壊力がある」。こう語るのは、東京大学の松尾豊教授だ。

 ガートナージャパンの亦賀忠明ディスティングイッシュトバイス プレジデントアナリストは「従来のAIチャットボットが主に登録済みの回答文を基に対話する『人工無能』とすると、自ら適切な文字を組み合わせて自然な文章を出力する意味で、本当に人工知能的なものが出てきた」と話す。

大手金融機関でも利用や検証が進む

 ChatGPTの波は厳しいセキュリティー基準を設けている金融機関にも及ぶ。「日経FinTech」の2023年3月号では、ChatGPTに代表されるジェネレーティブ(生成)AIをテーマに、金融機関での利用の可能性をまとめた特集企画を進めている。

 取材を通じて一部の大手金融機関でも、ChatGPTや生成AIの検証のみならず、既に実利用を想定したシステム開発が進んでいるのを知って驚いた。用途もモバイルアプリを通じた接点強化、コールセンターの自動応答の高度化や効率化、システム開発のテストデータやテストパターンの生成支援など多岐にわたる。

 働き方や社会を変えるほどのインパクトを持つ生成AIは、当然システム開発も変革する。NTTデータの野村雄司データ&インテリジェンス担当EGMグループ課長は、「システムエンジニア(SE)の仕事を代替する可能性も十分あり、当社のビジネスモデルに与える影響も大きい」と危機感をにじませる。

 大きな変化が予想できるのがクラウドの活用だ。周知の通りChatGPTは米Microsoft(マイクロソフト)のパブリッククラウド「Microsoft Azure」上で稼働している。新興AI企業の米OpenAI(オープンAI)は2022年11月に、ChatGPTをWeb上で一般公開した。2023年1月にはマイクロソフトが、OpenAIの大規模言語モデル(LLM)をAzure上で利用できるマネージドサービス「Azure OpenAI Service」の一般提供を始めた。

日本マイクロソフトによるAzure OpenAI Serviceの説明資料
日本マイクロソフトによるAzure OpenAI Serviceの説明資料
(出所:日本マイクロソフト)
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 Azure OpenAI ServiceはChatGPTの基になったLLMより前のバージョンである「GPT-3」や、コード生成能力を持つAIモデルの「Codex」などをREST API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)として使える。2023年3月9日(米国時間)には、マイクロソフトがChatGPTのプレビュー版についてもAzure OpenAI Serviceで利用可能になったと発表。マイクロソフトは矢継ぎ早に攻勢をかけている。