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 リコーからカーブアウトしたスタートアップのベクノスは年内にも、ペン型の全天球カメラを世界で初めて売り出す。同社の生方秀直CEO(最高経営責任者)はリコーの全天球カメラ「THETA(シータ)」の生みの親。あえてリコー本体から離れて、新製品の開発に挑む理由はどこにあるのか。そこには、複合機に代わる新たな収益源の確立を模索するリコーの思惑も見え隠れする。

 チームAKB――。ベクノスの源流は、リコーが2018年4月に社内で立ち上げた「AKB」と呼ばれる3つのプロジェクトにある。3つのプロジェクトのうちの1つが、生方氏が提案した新規事業だった。

 当時、リコーは山下良則社長が指揮を執り、構造改革から再成長へ軸足を移し始めた頃。リコーは複合機が中心のオフィスプリンティング事業が連結売上高の半分程度を占める。ペーパーレスの流れが加速するなか、複合機に代わる新たな収益源の確立を模索していた。チームAKBはその試金石といえる取り組みだった。

 それまでもリコーはいくつもの新規事業に取り組んできたが、ほとんど芽が出なかった。「(複合機などの)コア事業の常識が通用しなかった」(生方氏)からだ。

 そこで山下社長が繰り出したのが、新規事業を別会社として切り出す「カーブアウト」という手法だった。本体からできるだけ遠ざけ、リコー流とは異なるプロセスで事業の芽を育てようとした。しかも、リコーにとって「虎の子」といえる全天球カメラに関する新規事業を切り出し、2019年8月にベクノスを設立した。

 CEOの生方氏はTHETAの生みの親といえる存在。2010年、当時の近藤史朗社長に「世界初の全天球カメラ」というアイデアを提案し、2013年に量産出荷にこぎ着けた。世界で600万台規模といわれる全天球カメラの市場を切りひらいてきた。

 生方氏は2019年12月にリコーを退職。リコーから一定の距離を置いて、スタートアップの流儀を貫く考えだ。人事やITなども独自の仕組みを採用する。

開発中の全天球カメラを手に持つベクノスの生方秀直CEO
開発中の全天球カメラを手に持つベクノスの生方秀直CEO
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