欧州委員会(EC)が2022年11月に提案した自動車の新たな環境規制「Euro 7(ユーロ7)」。現行規制「Euro 6d(ユーロ6d)」まではテールパイプ(排気管)から出る物質を対象としてきたが、今回から新たにタイヤやブレーキから出る粉じんも規制する方針が示された。
取材を進める中で、今回の粉じんへの規制について、ある欧米の1次部品メーカー(ティア1)の関係者から興味深い意見を聞いたので、紹介したい注)。「住宅地などを運転する際に(信号機のない交差点などにおいて)、より多くの車両が通過する方向に一時停止の標識があり、ほとんど車両が通らない方向が優先されている場所をよく見かける。車両がより多数通る方向を優先にすれば、無駄な一時停止を減らせる」(同関係者)との指摘だ。
注)ただし、タイヤやブレーキ由来の粉じんへの規制が日本にも導入された場合の話である。
つまり、道路や標識などインフラ側の工夫によって、ブレーキをかける回数を減らすことで、タイヤの摩耗やブレーキパッドとローターの摩擦で出る粉じんを減らすことにつながるのではないかということである。
もちろん、前述のようなケースは、安全を第一に考えたうえで優先する方向を設定している場合もあると思われる。一概に交通量だけで判断はできないだろう。ただ、タイヤやブレーキ由来の粉じんを減らすうえでは、面白いアプローチだと感じた。
というのも、筆者にはタイヤやブレーキのメーカーが対処する以外の発想がなかったからだ。これらのメーカーが対応を迫られるとの前提だけで取材を進めていた。
実際、「(タイヤやブレーキの)サプライヤーが取り組むべき問題」(ある欧州の大手エンジニアリング会社の関係者)といった見解や「タイヤメーカーの技術力が問われている」(ある国内タイヤ大手の技術者)との声を聞いた。先日(2023年3月8日)は、タイヤ大手の住友ゴム工業社長の山本 悟氏がユーロ7に言及し「タイヤの摩耗粉じんは重要な課題だと認識している」と述べていた。タイヤやブレーキのメーカーがユーロ7への対応に取り組まなければならないのは事実だろう。