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 東京都は、2025年度から住宅を含む新築の中小規模の建物に、原則として太陽光発電(PV)設備の設置を義務づける。設置義務を負うのは建物の購入者ではない。都内で年間延べ面積2万m2以上の新築建物を供給する事業者だ。都の調べでは大手ハウスメーカーなど50社が該当するという。

 都は、事業者にただ義務を課すのではなく、例えばPV搭載の住宅商品の開発へ助成金を交付するなど、インセンティブも用意している。だが、PV設備設置の費用は住宅購入者が負担するので、設置義務を負う大手ハウスメーカーが、住宅購入者を説得してPV設備を設置することになる。

義務対象となる事業者や、助成事業の概要を整理した(出所:東京都の資料を基に日経クロステックが作成)
義務対象となる事業者や、助成事業の概要を整理した(出所:東京都の資料を基に日経クロステックが作成)
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 制度施行に先立ち、大手のハウスメーカーは、PV設備の設置を住宅購入者にどう提案しているのか。東京都内で戸建て住宅の購入を検討する筆者の友人に、状況を聞いてみた。

 友人は東京都内の自治体に務めており、PV設置の義務化も知っていた。22年9月ごろから住宅展示場などで説明を聞いたところ、「全ての事業者がPV設備を含めた提案をしてきた」と話す。

 多摩地域で検討していたところ、150万円ほどがPV設備の設置費として計上された見積もり(資金計画書)が届いた。細かい仕様を検討していく中で、「150万円」は、こだわりのキッチンカウンターの費用に充てることにしたそうだ。友人のマイホームは4月中に完成予定だ。

 1つの事例にすぎないが、PV設備はメニューから外された。人生に一度の買い物で優先順位を考えた末の友人の行動は、多くの住宅購入者の行動を示唆するものといえるだろう。

 不動産総合サイトを運営するアットホーム(東京・大田)によれば、23年1月時点の都内における新築戸建ての価格動向は、上昇を続けている。限られた予算でどんな家を実現するか、住宅購入者は真剣に検討している。そんな住宅購入者にPV設備の設置を納得してもらうには、費用負担を軽減する助成制度が重要ではないだろうか。

2017年1月から23年1月までの東京都における新築戸建て住宅の価格推移。上のグラフが23区で、下のグラフが都全体を示す(出所:アットホーム)
2017年1月から23年1月までの東京都における新築戸建て住宅の価格推移。上のグラフが23区で、下のグラフが都全体を示す(出所:アットホーム)
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