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 「FinTechという言葉はもう古い」

 日経FinTechの「デジタル金融未来レポート2020」で掲載の金融機関など約100社中50社を取材した際、多くのデジタル化推進担当者から聞いた言葉だ。この言葉にはいくつかの意味合いを含むが、共通的なところは「これまでFinTechと言われてきた狭い範囲の新サービス開発にとどまらず、企業全体のデジタル化にテーマが移っている」ということだろう。

 それを体現するように各金融機関は軒並み、これまでFinTechを推進してきた組織を衣替えしている。

 例えば、地方銀行でデジタル化推進の先頭を走っている、ふくおかフィナンシャルグループでは、従来の「デジタル戦略部」を「事業戦略部」に改め、新サービスだけでなく既存の本業領域を含めたデジタル化推進に取り組んでいる。

 保険業界でも同様だ。第一生命ホールディングスは、「InsurTech」という言葉が定着する前の2015年に「InsTech推進室」を設置し、早くからテクノロジーの活用を進めてきたが、2020年4月に部に格上げする形で「イノベーション推進部」に移管する。「もはやInsurTechという言葉は古い」という認識だ。

中身も激変していく金融機関

 組織の衣替えだけでなく、企業全体の中身をデジタル化によって激しく変え始めた金融機関も多い。特に地銀は生き残りをかけ、思い切った方向転換を試みている。

 例えば広島銀行は、データ活用に活路を見いだしている。2020年4月から始まる新たな中期経営計画でデータ活用事業を柱の1つとすることを検討中だ。

 既に実証実験レベルでの取り組みを実施。広島県の委託事業「ひろしまサンドボックス」に採択された「データ連携基盤構築実証事業」で金融関連、電力関連、購買関連、人の流れなど地場企業が保有する各種情報を集め、加工・分析できるプラットフォームを構築している。広島銀行としては、データの活用側あるいはデータ収集や分析のプラットフォーム側に立てるかどうかを探っているところだ。

 キャッシュレスや地域通貨を活用した取り組みも興味深い。スマートフォン決済サービス「Payどん」を提供している鹿児島銀行は、Payどんにポイントサービスの機能をつける計画を持っている。Payどんが地域通貨のように利用される世界観がその先にある。

 同行は、ユーザーの利便性を高めるためのサービス展開を進めており、例えば弁当の事前オーダーにPayどんを活用する実証実験を実施中だ。事前オーダーなどのサービスは銀行法の枠組みから外れるため、銀行業高度化等会社を設立して事業を行うことを検討している。