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 いつも通り見慣れた駅に電車が停まり、扉が開いた瞬間、筆者は異変を感じた。開いた扉から見える風景が、ユッサユッサと揺れていたのだ。実際に揺れていたのは電車のほうで、ここで初めて地震に気が付いた。

 2022年3月16日深夜に福島県沖地震が発生したとき、筆者は駅に到着したばかりの電車の中にいた。駅がある地域は、震度3を観測。思ったほどの大きな揺れではなかったが、電車は安全確認のため、しばらく運転を見合わせて停止していた。

筆者が2022年福島県沖地震に遭遇した高架の駅舎(写真:日経クロステック)
筆者が2022年福島県沖地震に遭遇した高架の駅舎(写真:日経クロステック)
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 その間、印象的なアナウンスがホームに流れた。「ホームにいる人は、電車か駅のコンコースに移動してください」という内容だ。高架の上にあるホームは揺れが大きく、地上のコンコースのほうが安全ということだろうか。

 電車の中に移動したほうが安全なのはなぜか。不思議に思ったが、恐らくはホームの屋根に取り付けられた案内板や設備機器の落下などから身を守るための注意喚起だったのだろう。筆者はそう推察した。

 このところ、とにかく地震が多い。建物が倒壊するような大きな被害が少ないことが救いだ。ニュースで流れる被災地の映像などを見ていると、ホールや体育館の天井が床に落ちたり、壁がひび割れたりタイルが崩れ落ちたりしている被害が多いと感じる。建物が倒れるような巨大地震はめったに起こらないが、天井材や外装材の被害は頻繁に発生しているということだ。

 天井材や外装材は、建築分野では「非構造部材」と呼ばれる。柱や梁(はり)といった構造部とは別の部材という位置づけである。地震で建物が揺さぶられたとき、天井材や外装材は構造体とは別の動きをする。そのため、ひび割れや脱落、落下といった被害が発生する場合がある。古い建物だけでなく、新しい建物でもこの手の被害は発生する。

 中でも、建物を取り囲む外側の非構造部材が落下すると、建物の周辺に危害を及ぼす可能性が出てくる。地震ではがれた外壁タイルや割れたガラスの破片が、人や車などに当たると非常に危険だ。崩れた外装材が、道を塞いでしまう可能性もある。

 そこで、地震による非構造部材の損傷や落下などのリスクを事前に知っておくのに役立つ「耐震診断指針」を紹介したい。日本建築防災協会が発行している「既存建築物の非構造部材の耐震診断指針・同解説」である。特徴は、1次診断であれば難しい計算などをしなくても、簡単に診断できることだ。構造種別や構造形式、建物用途から、非構造部材の種類ごとに表を使って簡易判定できる。