全2282文字

 東芝と東芝デバイス&ストレージは2021年末に、世界で初めて「共鳴型マイクロ波アシスト磁気記録(MAS-MAMR)」によるHDDの大幅な記録能力の改善を実証することに成功したと発表した。現時点では、これまで理論として提唱されてきた原理を実証できた段階だが、3.5インチのHDD(ハード・ディスク・ドライブ)1台で30TB(テラバイト)超という大容量化へ向けての見通しが立ったとしている。

 高速な読み書きが可能なSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)に市場をどんどん侵食されているHDDが生き残るために不可欠なのは、高容量化のスピードを落とさないことだ。その点で、高容量化のための次世代技術として、MAS-MAMRのようなエネルギーアシスト磁気記録の実用化が数年以上前から期待されてきた。

 現在、通常記録方式(CMR)の3.5インチHDDで最も容量が大きい製品は20TBである。ここ5年以上、毎年2TBのペースで増えている。そのための主な手段は、同じ厚さのHDDに内蔵する磁気ディスクの枚数を増やすことだが、最高で10枚に達した今、この手法は限界に近づいたという見方もある。そんななか、MAS-MAMRの実用化にめどが立ったことは高容量化のペースを維持する上で重要な意味がある。

 その一方で、MAS-MAMRを超える大容量化のポテンシャルを持つとされる「熱アシスト記録(HAMR)」の開発も進められている。HAMRは記録ヘッドに小型のレーザー素子を取り付け、レーザー光でディスクの微小領域を加熱することで情報の記録を容易にして高容量化する技術である。

熱アシスト記録(HAMR)のイメージ。記録ヘッドに小型のレーザー素子を取り付け、レーザー光でディスクの微小領域を加熱して記録をアシストする
熱アシスト記録(HAMR)のイメージ。記録ヘッドに小型のレーザー素子を取り付け、レーザー光でディスクの微小領域を加熱して記録をアシストする
(写真:Seagate Technology)
[画像のクリックで拡大表示]

 米Seagate Technology(シーゲート・テクノロジー)は早くからHAMRの開発に着手し、18年12月には同技術を採用した16TBのHDDのサンプル出荷を開始した。20年には20TB製品も評価用に提供している。同社は26年に50TB、30年には100TB製品を出荷するロードマップを掲げており、ディスク1枚当たりで約10TBを実現することを目指している。このロードマップから推測すると、26年より以前のHAMRの実用化を目標にしているように見える。