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予兆テックと保険サービスを組み合わせる

 損害保険業界も予兆テック導入に積極的だ。MS&ADインシュアランスグループホールディングスは予兆テックを持つ保険IT企業である米Hippo(ヒッポ)に対して、2020年7月にコーポレートベンチャーキャピタルを通じて投資し、同年11月には三井住友海上火災保険も資本参加して、戦略提携を結んだ。ヒッポの技術をMS&ADグループの新規事業に役立てる狙いだ。

 ヒッポは家の年数や構造、屋根の状態といった複数の変数から、AIを使いリスク度を算出して保険を引き受けている。保険を引き受けた後もリスクに関する様々なデータを収集してモニタリングし、異常を検知した場合は契約者に通知して事故防止に役立てる。例えば住宅に取り付けたセンサーが異常を検知した場合や、空から撮った画像を解析して屋根に変化があった場合などだ。

 MS&ADインシュアランスグループホールディングスの執行役員グループCDOと三井住友海上火災保険副社長を兼任する船曵真一郎氏は、「データ収集や分析を軸に企業や個人のリスクを可視化し、事故の予防や被害を軽減する『リステック』に注力する」と話す。リステックはリスクとテクノロジーを組み合わせたMS&ADの造語だ。船曵氏は2021年4月に三井住友海上火災保険の社長に就任予定で、経営の立場からリステックの各施策を推し進める計画だ。

 損害保険ジャパンはセンシング技術を活用した自治体向け防災・減災サービスを始める。橋梁(橋)や人工的な斜面である崖の「のり面」、急斜面などに加速度センサーを取り付け、常時観測して崩れる予兆や損害の状態を把握する。2021年度をめどに保険商品として提供する予定だ。

 台風や豪雨といった自然災害をきっかけに橋梁やのり面が崩れ、人の命が失われたり、交通に影響が出たりすることがある。実際に崩れてしまう前に修繕するため、センサーから得られる数値にしきい値を設けて超えた場合に、かかる事前対策費用を損害とみなして損害保険ジャパンから一部費用を支払う。橋梁であれば補強したり、のり面であればくい打ちをしたりできる。

 同社はメインマーク・ストラクチュアル・コンサルティング(メインマークSC)などと共に新サービスを作る。メインマークSCは強振動や微振動のセンシングや解析により、自然災害による構造物の状態変化を検知する技術や状況を定量的に評価する技術を持つ。

 「損害保険会社として、事故や災害被害による損害を補償するだけでなく、そもそも事故の発生数を減らしたい」。損害保険ジャパンなどを傘下に置くSOMPOホールディングスのグループCDOを務める楢崎浩一執行役常務はこう話す。同氏は事故を予防する上で、AIなどのデジタル技術活用が重要であると強調する。

 センシングや画像解析によって異常を検知し、未然に故障や事故を防ぐ「予兆テック」。故障や事故が起きてから対処するよりも、センシングして少しずつメンテナンスする方が、時間的にも経済的にも効率的だ。業界を問わず、予兆テックに商機を見いだす企業はこれからも増加しそうだ。