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 近年、様々な分野で中国企業の存在感が高まっている。日本企業や欧米企業と比べた場合の、中国企業の特徴は何か。台頭著しい中国企業に死角はないのか。中国企業で働く、業界で名の通った2人の人物に話を聞く機会があった。

 1人は、元エルピーダメモリ社長で、2019年11月に中国・紫光集団の高級副総裁に就任した坂本幸雄氏(日本法人最高経営責任者を兼務)。もう1人は、華為技術(ファーウェイ)日本法人のキャリアネットワークビジネス事業本部最高技術責任者を務める赤田正雄氏だ。坂本氏は大学卒業後に入社した米テキサス・インスツルメンツ(TI)日本法人で28年勤務、赤田氏はNECを皮切りに、米国(モトローラ)、欧州(同社の無線通信機器部門を買収したノキア・シーメンス・ネットワークス)、韓国(サムスン電子)の企業を渡り歩いた経歴を持つ。

左が坂本氏、右が赤田氏(写真:加藤 康)
左が坂本氏、右が赤田氏(写真:加藤 康)

手を出された方も認める文化

 まず両氏が挙げたのは、個々の裁量の大きさである。坂本氏は紫光集団に入社した当初、中国本社からの厳しい管理で「がんじがらめになるのではないか」(同氏)と考えていた。だが、実際には「予算も人事も自由にやらせてもらえている」(同氏)。かつて在籍したTIと共通しているのは、「人や部門ごとにカバー領域が厳密に分かれているのではなく、できる人や部門がさっさとやった方が良いという考え方。手を出された方もそれを認める文化がある」(同氏)ことだという。

 これについて、赤田氏は「ファーウェイは典型的な中国企業とはいえないかもしれないが」と前置きした上で、同社にも似たような企業文化があると語る。同社は、創業者の任正非氏が創業期に米国企業式の業務プロセスを取り入れたことで知られている。

 ここで筆者の個人的な印象をいえば、ファーウェイは事業部門間の壁が高い企業だと思っている。同社には、「コンシューマー向けビジネス」「通信事業者向けビジネス」「一般企業向けビジネス」の3部門があるが、この3部門はそれぞれ独立した会社のようだと感じることが多々ある。赤田氏が言及しているのは、各事業部門内のことだとすれば納得がいく。

 裁量や領分に関する彼我の差は、技術者をはじめとする専門職の扱いに根差していそうだ。「日本企業は技術者として入っても、いずれはゼネラリストとして課長、部長と昇進する。一方、欧米企業は様々なスペシャリストをそろえておき、プロジェクトごとに集まり仕事を進める。昇進や異動、転職などもそれぞれの職域でやっている。ファーウェイもこれに近い」(赤田氏)。

 ただし、そのようなやり方がうまく機能しないケースもある。例えば、坂本氏が紫光集団に招請された理由でもある半導体メモリーはその典型だという。同氏によれば、一口に半導体といっても、プロセッサーは技術が非連続的に進化するので、欧米や中国のやり方が合う。だが、メモリーやイメージセンサーなどアナログ要素が強い半導体は技術が連続的に向上し、ノウハウが個々の技術者に蓄積されていく。そのような分野では、徒弟制が色濃い日本や韓国のやり方が合っている。

 中国企業がプロセッサーでは比較的早い立ち上がりを実現しているのに対し、DRAMやNANDフラッシュメモリーで苦戦している要因はその点にあると坂本氏は分析する。「日本企業に植え付けられている『次工程はお客様』の精神を中国企業の経営者はまだ理解できていない。メモリーの場合は、技術者の定着率も重要だ」(同氏)。ただし、どちらかのやり方が優れているという話ではなく、どちらの要素も取り入れた「ダイバーシティー(多様性)が必要になる」(同氏)。