4月から新年度に入り、異動先の部署で仕事を始めた読者は少なくないだろう。異動はしなかったものの上司が交代した、という方もいるかもしれない。
どちらにしても新たな上司や同僚、部下あるいは顧客と付き合っていくことになる。その際、厄介なのは人間関係である。やりづらい人が職場にいたら花見どころではない。
筆者の場合、所属先は変わらなかったがいわゆる主務が変更になり、業務報告の相手が従来とは別の人になった。「定年」という文字が見えてきた年齢だから4月以降の報告相手が筆者にとって最後の上司になりそうだ。相応に気を使い、彼とうまくやっていかなければならない。
そんなことを考えていたところ知り合いの方から連絡があった。
「エンジニアの方が“ザ・文系”みたいな人とうまくやっていくために役立つ本を書いたので読んでみてください。逆もしかりで文系の方がエンジニアとうまくやるためにも使えます」
知り合いとはコンサルタントの秋山進氏、本の題名は『職場の「やりづらい人」を動かす技術』(KADOKAWA)である。新しい上司のことは昔から知っているし、「やりづらい人」ではなさそうだし、上司も筆者も理系だし、そもそも大人物の上司を動かそうなどと大それたことは考えていないが、折角勧められたので本をめくってみた。
「やりづらい人」はどこにでもいる
読み始めるとまず、「やりづらい人」とのやり取りに苦労した話が色々出てくる。秋山氏が長年のコンサルタント活動を通じて出会った実例から作ったそうだ。
自分のことを振り返りつつ読むと「確かにこういうことがあったなあ」と遠い目になる例があった。執筆意欲が喚起されたが詳しく書くとさすがに差し障りがあるし、日経 xTECHのIT担当編集長から叱られるのは確実だから控えたい。
xTECH読者の皆さんが「とにかくやりづらかった相手」とのやり取りを振り返ったら、似たパターンが秋山氏の本に出ている、そう思っていただいて間違いない。
あれこれ良く気が付くエンジニアの方が技術面の問題を見つけ、対策を自分なりに考え、上申したとする。ところが上司は「2018年の今、当社の事業環境を考えると、それを直すことにどういう意味があるのか」と、時代を語る評論家のような態度を見せ、なかなか取り合ってくれない。エンジニアからするとこういう上司とは仕事をやりづらい。
もっとも上司は「その対策を実行すると事業や組織や採算にどう影響するのか、そこまで詰めてから提案してくれないと判断できない」と考えているのかもしれない。創意工夫ができる技能者だとしても、視野が少々狭いと上司としては仕事をやりづらい。
秋山氏の見立てによると、こうした「創意工夫の技能者」と「時代を感じる評論家」がお互いやりづらいのは、ものの見方や考え方、行動の仕方が両者で異なるからだ。
視点・思考・行動は人によって違う
「創意工夫の技能者」は「ミクロ」の視点を持ち、「直観で意味をとらえる」思考をして、行動の際には目的を遂行するための具体的方法、すなわち「HOW」を明確にしようとする。
一方、「時代を感じる評論家」も「直観」で思考するが、視点は「マクロ」であり、行動にあたっては「あるべき状態はどのようなものか」、すなわち「WHAT」を明確にすることを目指す。
このように秋山氏は「ミクロかマクロかという視点」「直観か論理かという思考」「WHATかHOWかという行動」の3軸に注目した。思考において「論理」を重く見る人は「客観的な事実やデータとロジックによる検証を要求する」。
3軸の組み合わせによって人は8つの型に分けられる。理系と文系の2つではない。秋山氏は8つの型ごとの特徴を説明し、さらに各型同士の相性、合計36通りについて考察した。
36通りの説明を通読するのは辛そうだが、おそらくその必要はない。「やりづらい人」がどの型かを推定し、自分の型との相性が書いてある下りを読めばよいからだ。
自分がどの型なのか、調べる
まず、自分がどの型なのかを調べよう。30項目ある質問票が同書に載っており、質問に対し「すごくそう思う」(2点)、「まあそう思う」(1点)、「まったくそうは思わない」(0点)の三択で回答し、点数を集計すると型を自己判定できる。
早速やってみたところ悩ましい結果が出た。行動について筆者は「WHAT」重視であった。ところが視点と思考がはっきりしない。マクロとミクロ、直観と論理がそれぞれ同得点であった。
「まったくそうは思わない」と答えた数が少ない方を優先して判定すると、筆者は「マクロ×論理×WHAT」の型になる。秋山氏の命名によると「正しさを求めるコンサルタント」になる。
これはおかしい。秋山氏本人の型は「正しさを求めるコンサルタント」だそうで、それは納得できるが、秋山氏と筆者が同じ型とは到底思えない。
そこで「すごくそう思う」と回答した数が多いほうを優先して見直すと筆者の型は「ミクロ×直観×WHAT」になった。