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 日本では今や、DX(デジタル変革)は企業がこぞって取り組む施策となっている。筆者はDXの一丁目一番地がAI(人工知能)活用にあると考えており、以前のこのコラムで理由を示した。

 実際にDXの取材をすると、具体的な取り組みとして話が出るのはAI活用が圧倒的に多い。特定の業種や企業、業務によらず、AI活用は着実に広がっている印象だ。

 しかし歯がゆいことがある。現状ではAI活用といっても、人の「業務支援」にとどまるケースが大半を占める。基本的に業務の主役は人のままだ。AIが業務を支援し、人のミスを減らしたり生産性を高めたり創造性を補ったりする。

 一方、AIに業務を任せて人は異常対応や例外処理などの補助に回る「業務自動化」を実現するケースは少ない。それどころか、既にAIによる業務支援を実現していても、その先に業務自動化を具体的に目指していないケースさえ散見される。業務支援のAIをつくって終わり、というわけだ。

 AIによる業務自動化の難易度は、業務の特性によって大きく変わる。そのため筆者は全ての業務をAIで自動化できると考えているわけではない。それでも、業務支援を実現できたなら「次は自動化だ」と突き進むことを期待せずにいられない。

 それは企業の競争力を考えるとき、AIによる業務自動化は大きな鍵になるからだ。逆にいえば、AIによる業務自動化で後れを取ると、先行企業にシェアを奪われかねない。あるいは、先行企業が提供する業務自動化のAIサービスを買う羽目になるかもしれない。

 サービス分野は違うが、米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)のクラウド「Amazon Web Services」を日本でも多くの企業がシステム基盤として使っている。同じようにAI分野でも、業種別・業務機能別に複数の先行企業が業務自動化のAIサービスを提供し、その中で勝ち残ったものを他の企業が使う。そんな未来像を予想している。

業務を自動化できない原因の1つは品質保証

 ではなぜAIによる業務自動化を目指さないのか。真っ先に思い浮かぶのは、終身雇用のため業務をAIに置き換えても人を減らせない、業務の現場がAIによる自動化を望まない、といった原因かもしれない。しかし人材不足の業種でもAIによる業務自動化が進んでいない状況を考えると、さらに根深い問題があると考える。それはAIを信頼できないことだ。