表向きには「価格を2倍に上げながら、販売台数も伸ばしている秘訣をお伺いしたい」という取材である。だが、胸の内にしまっていたのは、「価格が2倍になって買い替えられない。どういうつもりか?」だ。私情を持ち込んだ取材をお許しいただきたい。
欧州Stellantis(ステランティス)傘下のJeep(ジープ)ブランドが展開するSUV(多目的スポーツ車)「ラングラー」の話である。筆者は4ドアモデルの「ラングラーアンリミテッド」を2016年に買った。3代目(JK型)ラングラーの後期モデルで、車両価格は400万円ほどだった。
乗り始めてからもうすぐ7年、走行距離は7万kmを超えたくらい。ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)用センサーの不具合があったり飛び石でフロントウインドーが2回割れたりした程度で、“アメ車は壊れやすい”という実感はなく好調だ。
2018年11月には全面改良した4代目(JL型)が登場。外観デザインなど伝統を継承しつつ、「乗りやすさや燃費面などJK型ユーザーへの細かいリサーチを重ねて不満点を改善した」(Stellantisジャパンマーケティング部プロダクトマネージャージープの渡邊由紀氏)。一例が最小回転半径で、7.1mから6.2mになった。絶望的だった小回り性能(慣れれば全く問題ないが)が改善し、JL型は普通のクルマになったと言っていいだろう。
だが、高い。しかもどんどん上がっている。
ラングラーアンリミテッドの価格変遷を振り返ろう。ラングラーには4ドアのラングラーアンリミテッドと、2ドアのラングラーという2モデルがある。前者が初めて登場したのが2007年3月発売の3代目である。このときの最低価格は379万500円(税込み)だった。
2012年1月に大幅改良した後期モデルは368万円(同)でスタートした。ここがラングラーアンリミテッドの底値だ。その後、部分改良で価格は少しずつ上がり、筆者が購入した2016年は396万3600円(同)だった。全面改良手前の2018年4月には432万6000円(同)となったが、装備の充実や仕様の変更などを考えれば妥当なところだろう。
2018年に登場した4代目は494万円(同)から。直近モデルから60万円以上の価格上昇となり、「販売台数は半減すると想定していた」(渡邊氏)という。だが、実際には3代目よりも台数は増えた。ラングラーの販売台数は、2018年は4325台で、2019年は4873台だった。
ユーザー(筆者)としては「500万円はちょっと高いが、買い替えの許容範囲」と思っていたが、これが油断だった。