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 2035年までに乗用車において新車の100%を電動化する――。日本政府が掲げる目標だ。加えて、日本では、2030年度から次期燃費基準が待ち受ける。同基準では、乗用車の燃費を2016年度実績に対して32.4%改善することが必要とされている。

 そこで、課題となっているのが、登録車に比べて電動化が遅れていた軽自動車の、本格ハイブリッド車(HEV)化だ。電気自動車(EV)化という選択肢もあるが、電池がまだ高価な現状において、手ごろな価格の軽EVは実現しにくい。そこで、期待がかかるのが本格HEV化だ。

 ただ、軽自動車の場合、全長が3400mm以下、全幅が1480mm以下、全高が2000mm以下と定められている。エンジンを残したまま、本格HEV化に必要な部品を搭載できるスペースは非常に限られてしまう(図1、2)。HEVの開発に携わってきたある専門家は、2年ほど前の取材の際に、シリーズ方式のハイブリッド機構の搭載は、レイアウト的にかなり厳しいだろうとみていた。

図1 日産自動車の小型車「ノート」のシリーズ方式HEVのエンジンルーム
図1 日産自動車の小型車「ノート」のシリーズ方式HEVのエンジンルーム
エンジンルームはぎっしりと詰まった印象がある。(写真:日経クロステック)
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図2 ノートに搭載しているシリーズ方式のハイブリッド機構
図2 ノートに搭載しているシリーズ方式のハイブリッド機構
第2世代の「e-POWER」を搭載する。(写真:日経クロステック)
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 だが、状況は変わりつつある。日産自動車は2023年3月、シリーズ方式のハイブリッド機構「e-POWER」を搭載した軽自動車を試作していたことを明らかにした。ダイハツ工業も、シリーズ方式のハイブリッド機構を2021年11月発売の小型SUV(多目的スポーツ車)「ロッキー」で実用化済みで、当時既に軽自動車にも搭載可能なことを明かしていた(図3~5)。

図3 ダイハツ工業の小型SUV「ロッキー」のシリーズ方式HEVのエンジンルーム
図3 ダイハツ工業の小型SUV「ロッキー」のシリーズ方式HEVのエンジンルーム
エンジンルームには多少の空間的なゆとりが感じられる。(写真:日経クロステック)
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図4 ロッキーに搭載しているシリーズ方式のハイブリッド機構
図4 ロッキーに搭載しているシリーズ方式のハイブリッド機構
写真はカットモデル。(写真:日経クロステック)
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図5 シリーズ方式のハイブリッド機構だけを配したロッキーのエンジンルーム
図5 シリーズ方式のハイブリッド機構だけを配したロッキーのエンジンルーム
軽自動車にも搭載可能なサイズに抑えているという。(写真:日経クロステック)
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