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 「ゼロカーボンスチールの実現を最重要課題と位置付けて積極的に取り組む。極めて困難な課題だが総力戦で挑む」――。日本製鉄は、2021年3月30日にオンライン記者説明会を開催、同社常務執行役員(環境担当)の鈴木英夫氏は冒頭のように述べて「ゼロカーボンスチール」への意気込みを見せた。

 菅義偉首相が20年10月の所信表明演説で打ち出した「カーボンニュートラル宣言」。国内の温暖化ガスの排出を2050年までに「実質ゼロ」とするもので、これを受けて国内の産業界でもにわかに動きが活発化している。

 中でも厳しい対応を迫られているのが鉄鋼業界。鉄を製造する高炉から大量の二酸化炭素(CO2)を排出するからだ。実は、鉄を製造する際に排出するCO2の量は製造量1kg当たり約2.2kgで、同13kg弱のアルミニウムや同22kgの炭素繊維強化樹脂などに比べて小さい。単位質量当たりでは鉄は比較的クリーンな材料といえる。しかし、使用量が圧倒的に多いため、鉄鋼業におけるCO2排出の総量もまた多い。使用セクター別にみると日本の総排出量の15%にも及び、産業分野の実に4割近くを占めるという。

鉄鋼製造プロセスにおけるCO<sub>2</sub>排出
鉄鋼製造プロセスにおけるCO2排出
(出所:日本製鉄)
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 このままでは、地球環境への負荷の高い産業としてイメージが悪化するだけでなく、炭素税などが導入されれば事業活動への影響は必至。それ故、製鉄プロセスのCO2排出の低減に挑もうとしているのだ。

 同社は、30年までにCO2総排出量を対13年比で30%削減し、50年までにはカーボンオフセットなども活用してカーボンニュートラルを実現する計画を表明している。それを実現するための革新技術が、「大型電炉での高級鋼製造」、高炉に水素を吹き込んで鉄鉱石を還元する「Super COURSE50高炉」、高炉を使わずに水素で直接還元する「100%水素直接還元プロセス」の3つだ。

 30年ごろまでに大型電炉での高級鋼製造を実機化。加えて現在実証試験を進めている「COURSE50」(詳細は後述)の技術を生かし、40年ごろにはSuper COURSE50として実機サイズでの実証試験を行い、50年までには100%水素直接還元も含めた全てを実用化するとのロードマップを描いている。

製鉄プロセスにおけるCO<sub>2</sub>排出量削減のための3つの革新技術
製鉄プロセスにおけるCO2排出量削減のための3つの革新技術
(出所:日本製鉄)
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