全1455文字
PR

 無用の混乱を招く恐れがある――。2020年11月に桁端部が跳ね上がる事故を起こした山口県の上関大橋について、モニタリングデータなどを非開示とした県の言い分だ。日経コンストラクションが公文書開示請求で入手した資料では、点検記録や事故後の損傷状況と思われる箇所も、大部分が黒塗りになっていた。

山口県の上関大橋について日経コンストラクションが公文書開示請求で入手した資料。モニタリングデータや点検記録、損傷状況など大部分が黒塗りになっていた(写真:日経クロステック)
山口県の上関大橋について日経コンストラクションが公文書開示請求で入手した資料。モニタリングデータや点検記録、損傷状況など大部分が黒塗りになっていた(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 報道関係の仕事に長らく携わってきた筆者にとって、「混乱を招く」は最も嫌いな言葉の1つだ。この言葉を持ち出して情報を隠す人間は、まず信用できない。

 20cmの段差発生で済んだのは奇跡的な幸運で、実は落橋寸前の極めて危険な状態だったのかもしれない。構造の要となる鋼棒の破断によって、全体の力学的な状態が設計と根本から変化した。どこにどんな力がかかって持ちこたえているのか、全く分からなくなってしまった。

 現地を調査した専門家は、「事故の原因究明よりも、とにかく段差が拡大しないよう固定することが先決だ」と県に助言した。橋台の一部をはつって鋼棒の状態を確認する作業も、すぐには取り掛からなかった。しっかり固定する前に下手に振動を与えたら、何が起こるか分からないからだ。そうしたヒヤヒヤした状態のなか、県は事故の4日後には重量制限を課しながら交通を開放した。

 県は事故発生後、橋に各種のセンサーを取り付けてモニタリングを続けた。このデータこそ、橋の状態を知る重要な手掛かりだ。それを開示しない理由について、県は次のように回答した。

 「行政内部で審議中の案件、または内容の正確性の確認を終了していない資料で、公開することにより、県民に無用の誤解を与え、または無用の混乱を招く恐れがある」

 思い出したのが、福島第1原子力発電所の事故後に起こった放射性物質の拡散予測を巡る混乱だ。政府は、情報が不正確で社会の混乱を招くとして秘匿を続けた。それがかえって人々の疑心暗鬼を生み、混乱を引き起こした。日本の対応とは逆に、海外の研究機関などは積極的に拡散予測を公表した。

 下手に情報を出すと県民が騒ぎ立てるから隠しておこう。県の回答からは、そんな考えが透けて見える。

 県民軽視の姿勢は、これだけではない。