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 日経 xTECHでは日本航空(JAL)の旅客系基幹システム刷新プロジェクト、通称SAKURAプロジェクトの特集記事を4月9日から5日連続で掲載している。JALが2010年の破綻後、管財人の下でまとめた更生計画のうち、最後まで残っていた「ITシステム刷新」の計画。更生計画案の発表から7年以上、投資総額800億円超をかけて刷新が実現するまでの道のりをたどりつつ、大規模システム開発プロジェクトを成功に導くための要諦をまとめた。

 このSAKURAプロジェクトの立ち上げを当時の担当役員として起案し、2017年11月のカットオーバーまで経営トップの立場でプロジェクトを見守り続けたのが植木義晴社長(現会長)だ。JALの社長を2012年から6年間務め、この4月に会長へ退いた。

 植木氏は2010年の経営破綻から再生に向かう過程で、パイロット出身者で初めてJALの社長に就任。社長在任中にボーイング787型機の運航停止、ライバルの全日本空輸(ANA)に対する羽田空港発着枠の傾斜配分、そして熊本地震など数々の困難に直面しつつも、5カ年の中期経営計画を完遂し、JALを航空業界屈指の高収益企業に蘇らせた。

 記者は半年近くにわたりSAKURAプロジェクトの取材を続ける中で、JALグループやパートナー企業のプロジェクトメンバーはさることながら、植木氏も複数の点で大きな役割を果たしていたという感想を持った。大規模なシステム開発プロジェクトは、残念ながら経営トップの協力を得られず失敗に終わることが少なくない。植木氏がSAKURAプロジェクトで果たした役割は、大規模システム開発プロジェクトに臨む経営トップの心の持ちようを学ぶ貴重な材料となる。

日本航空(JAL)の植木義晴社長(現会長)。旅客系基幹システムの刷新プロジェクト発足時に担当役員として携わり、その後も経営トップの立場で支え続けた
日本航空(JAL)の植木義晴社長(現会長)。旅客系基幹システムの刷新プロジェクト発足時に担当役員として携わり、その後も経営トップの立場で支え続けた
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運命を共にしたい人を選び、丸投げしない

 第1にプロジェクト責任者の選定基準だ。植木氏は社長在任中の2014年、当時Web販売部長だった西畑智博氏をSAKURAプロジェクト担当の執行役員に選んだ。当時のSAKURAプロジェクトは工期延長と費用追加が繰り返され、ゴールも見えない状況にあり、西畑部長はむしろ当時のプロジェクトの進め方に対し強硬に反対していた。その西畑部長の抜擢は、「誰と運命を共にしたいかで決めた」(植木氏)。

 植木氏はさらに「(稟議書に書かれる投資効果の)数字だけは立派でも本気でやる気がない人、結果が出なかった時に『環境が変わりました』と言う人とは運命を共にしたくない」と語る。一方で西畑部長は「最も『私にやらせてほしい』という思いの強い人だった」(植木氏)。稟議書やそこに書かれた投資効果だけでなく、担当者がプロジェクトに懸ける思いをトップがきちんとくみ取れるかが鍵となる。