全2574文字
PR

 「今の上海はおかしい」

 新型コロナウイルスの感染急拡大を受けて、都市封鎖(ロックダウン)が続く中国から悲痛な住民の声が聞こえてきた。「食料や生活必需品は不足しているものの、SNSを通じたコミュニティーで助け合いができている。一番怖いのは、新型コロナウイルスに感染して隔離施設に入ることだ」。こう話すのは、中国・上海に住む記者の友人の張さん(女性・仮名)である。

 ロックダウン下の上海で、新型コロナウイルスの新規感染者数が過去最大の2万5000人に――。こんなニュースを記者が耳にしたのは、2022年4月9日のことだった。すぐに連想したのが、20代の友人である張さんだ。心配しつつ連絡を取ると、無事を知らせる言葉と共に1枚の写真が送られてきた。

*上海市は2022年4月11日、市内の約4割の地区で外出制限を解除すると発表している。一方、同市の感染者数増加は歯止めがきかない状況だ(同月12日時点)。

 写真には上海のある隔離施設の様子が写っていた。工場のような広い空間に、簡易ベッドが等間隔に並べられている。床はコンクリートがむき出しだ(図1)。

図1 実際に送られてきたチャットの画面
[画像のクリックで拡大表示]
図1 実際に送られてきたチャットの画面
なお、アイコンは匿名化している。(撮影:日経クロステック)

 「陽性になったらこんなところに隔離されるかもしれない。(この恐怖は)想像できないでしょう」。隔離施設といえばホテルのような場所、というイメージを持つ記者の胸に突き刺さるような言葉だった。

 TwitterのようなSNSやニュースを通じて、上海の状況は漏れ聞こえてくる。記者が目にしたのは、拡声器を搭載した4脚歩行ロボットやドローンが、外に出ないよう警告して回る動画だ。建物の外ではロボットが行き交い、警告や監視を続け、住民は建物内から出られないディストピアのような世界である。「ゼロコロナ」政策を実現するために、中国が徹底的なデジタル監視社会をつくりあげていると記者は想像した。

 だが、実際に張さんに話を聞いていると、少なくとも彼女の周りではそこまで監視が徹底されていない様子だった。「そのようなロボットのことは初めて聞いた」というからだ。彼女が住む建物の外では、4脚ロボットやドローンどころか、配送ロボットさえ見かけたことがないという。どうやらロボットが活躍しているのは上海でも一部の区画であるらしい。

 むしろ実際の生活を聞いていて感じたのは、上海市民のバイタリティーである。住民たちはインターネットやSNSを駆使して、配給からは得られない必要物資を入手しているという。仮に日本でロックダウンのような事態が起きた場合、地域コミュニティーを活用できるのだろうかと、思わず自問自答してしまった。

 以下は、上海ロックダウンのリアルを知りたくなった記者が今週頭、張さんにインタビューした内容である。