この1年で、10キログラムほど痩せた。残念ながら、ドラマティックなダイエット成功体験は語れない。「RIZAP(ライザップ)」に通ったわけでもなければ、はやりの最新ダイエット法を試したわけでもないからだ。数年前から試していた3~5日間ずつの「水だけしか飲まない断食」をちょっと多めに実践してみたところ、スルスルと体重がどこかに抜け出ていってくれただけである。

 内臓が休まって体が軽くなった“気がする”し、なにより断食中に頭が冴え渡る“気がする”。もちろん、これは誰にでもお勧めできるやり方ではないが。

 さて、痩せて困ったのが服だ。特にスーツがいずれもブカブカになってしまい、どうにもこうにも格好が悪い。不細工な男としては、せめて見栄えぐらいは頑張りたいところ。そこでせっかくの機会だし、いつもと違うところでオーダースーツをいくつか作ってみることにした。

 いろいろ下調べをしてみて分かったが、この数年で今までにない顧客体験を提供する会社が増えていた。筆者は2016年に「洋服の青山」で知られる青山商事が開始した仮想試着サービス「バーチャルフィッティングアバターシステム」を取材した。そのサービスが引き金となったようで、オーダースーツ事業でITを駆使して趣向を凝らす企業が続出しているとは恥ずかしながら知らなかった。右肩下がりだったスーツ市場は、カスタマイズ好きの若者世代に支えられる形で息を吹き替えしつつあるようだ。

 今回、筆者が試したのは「青山商事」「コナカ」といった老舗の大手紳士服メーカーの新サービスと、2012年に誕生したばかりのスタートアップ企業FABRIC TOKYO(2018年2月までの社名はライフスタイルデザイン、3月に社名変更)である。

 結論から言えば、最も心をくすぐられたテーラーはFABRIC TOKYOだ。まず、訪れた店舗で「スーツを買えない」ところから、驚かされた。

FABRIC TOKYOの店舗は、これまでのテーラーの常識を覆す概念で設計されている
FABRIC TOKYOの店舗は、これまでのテーラーの常識を覆す概念で設計されている
(出所:FABRIC TOKYO、以下同)
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