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 ここで注目したい点が2つある。まずデジタル企業と非デジタル企業の定義だ。同協会の松岡剛志代表理事によると、同協会が初めて取り組んだ「DX動向調査」では、リアルではなくデジタルを顧客接点とした製品やサービスの売り上げが全体売上高の4割以上を占める企業を「デジタル企業」と定義したという。

日本CTO協会の松岡剛志代表理事(レクター社長)
日本CTO協会の松岡剛志代表理事(レクター社長)
(2019年9月19日撮影、今回の取材はWeb会議サービス経由で行った)
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 同協会の理事や法人会員にはヤフーやメルカリ、DMM.com、グリーといったWebサービスをなりわいとする企業が多い。だがスズキやクレディセゾンといった歴史ある大企業も名を連ねる。結果として回答企業は同協会の会員の割合が高かったとみられるが、アンケートに回答した149社の内訳はデジタル企業が7割強に当たる110社、非デジタル企業は39社だった。

テレワークは「当たり前」、個人が自由に選べる世界に

 もう1つの注目点は「個人の判断でリモートワークできる」割合がデジタル企業では42.2%もあることだ。「リモートワークを導入しているかの次はリモートワークをするのに誰かの承認が必要かという段階。それを超えたら個人の判断でリモートワークできるかと進む」(松岡代表理事)。

 テレワークの導入状況を調べたところ「一部導入企業が149社の9割弱の割合だった。デジタル企業と非デジタル企業で差が出る点を分析していって、『個人の判断』に行き着いた」(同)という。松岡代表理事はこの42.2%のデジタル企業は「リモートワークが当たり前の職場になっている」と見る。

 1つの例として挙げたのがスタートアップだ。「そもそも(事業規模が小さいため)フルタイムで働くエンジニアばかり採用できない。となると数多くのリモートワーカーと契約する会社が多い」(松岡代表理事)。新型コロナ禍でオフィスに一層行かなくなり、「今の真剣な悩みは郵便物をどう受け取るか、どうしても先方都合で必要な紙の書類や押印をどうするかに移っている」(同)。

 デジタル企業では個人裁量でのテレワークが当たり前になると同時に、副業の許可率も非デジタル企業の1.5倍ぐらいあるという。「デジタル企業は世間で言われている論点からもう一歩先の論点に進んでいる」と松岡代表理事は指摘する。テレワークや副業はもはや当たり前で、そのうえで個人に裁量をどこまで多く任せられるか、という論点だ。

強制的な働き方の変化を次につなげる

 新型コロナ禍の終息はまだ見通せない。長期化を懸念する声もある。一方で国や自治体のテレワーク支援・補助金拠出は矢継ぎ早に繰り出されている。IT企業のテレワーク関連製品・サービスの無償提供も相次いでいる。テレワークの導入はますます広がるだろう。ユーザー企業が本気で出社を控えるようになれば、IT技術者が「客先常駐」を解除されにくいという問題も好転するかもしれない。

 その先、アフターコロナでは、テレワークを基本とし、やむ得ない場合だけ出社する「テレワークファースト」がある程度ニューノーマルになる可能性はある。行動が変われば変革は早まる。今の新型コロナ禍は、松岡代表理事が「一歩先」と話すデジタル企業が間を置かずに日本にあふれるようになるきっかけになるかもしれない。