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 「このロボットが新婦の代わりに結婚式に参加したことがあるんです」

 「えっ、どういうことですか」。思わず、筆者は聞き返した。

 「実は新婦が妊娠をしていて結婚式の日に緊急帝王切開の手術を受けることになったんです。しかも新郎が会社の社長でVIPを招待していたので式を延期にできず、ひな壇に新婦の等身大のパネルと、この『OriHime』を設置して病院とつないで結婚式を行ったんです」

 話の主は、アバター(分身)ロボットを開発するオリィ研究所 代表の吉藤健太朗氏である。

オリィ研究所 代表の吉藤健太朗氏。同氏の左に並んでいるのがアバターロボット「OriHime」(写真:日経クロステック)
オリィ研究所 代表の吉藤健太朗氏。同氏の左に並んでいるのがアバターロボット「OriHime」(写真:日経クロステック)
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 OriHimeは高さ23cmの小型ロボットで、カメラやマイク、スピーカーを内蔵し、遠隔からタブレットやスマートフォン(スマホ)の専用アプリを通じてコミュニケーションが取れる。ロボットの腕を使う簡単なジェスチャー動作も登録されており、感情も表現できる。

 自分の分身として遠隔地からコミュニケーションを取ったり、何らかの作業をしたりするアバターロボットは、昨今の新型コロナウイルスによるパンデミック(感染症の世界的大流行)の影響もあって注目度が高まっている。しかし、結婚式で新婦の代役を務めたという話には正直驚いた。

 オリィ研究所は、ケガや病気、仕事の都合などでどうしても結婚式に参加できない人たちに向けて、OriHimeを使って式に参列できるサービス「OriHimeブライダルプラン」を提供している。ロボットの設置や当日のサポートはすべて専門スタッフが式場で行い、操作のサポートなども付いている。これまでに30回以上の使用実績があるという。

 結婚式の様子をリアルタイムに伝えるだけなら、タブレットやスマホのビデオ通話アプリでも十分だろう。でも、自分の分身となるロボットが宴席に“座り”、それを通して式に参加するのはまた別の体験だ。OriHimeなら自分の席の周囲の人と会話ができるし、それを通じて他の参加者も本来出席するはずだった人の存在を感じられる。