おそらく「会社の会議に不満がない」という読者はいないだろう。「ダラダラと長い」「時間通りに始まらない、終わらない」「誰も発言しない(しゃべるのは上司だけ)」「話が脱線ばかりする」「1時間たっても何も決まらない」「会議で決めたことが実行されない(覚えてすらいない)」「会議の後に話を蒸し返される」「会議をしても何も変わらない」──。
筆者を含め、ほとんどの人が「とにかく会議にはムダが多い」と感じているだろう。その証拠に、働き方改革を始めた企業が真っ先に挙げるテーマは決まって、会議改革になる。それくらい「グダグダな会議を何とかしたい」というのは、みんなの切なる願いなのだ。
実は筆者自身も数年前に、当時所属していた編集部の会議改革に取り組んだ経験がある。働き方改革という言葉がブームになる直前のことで、そのときはズバリ「業務改革プロジェクト」と呼ばれていた。名称はともかく、やはりテーマの1つは会議改革であり、筆者の編集部ではムダと思える会議は思い切って全てやめた。定例の会議もなくし、議論する必要があれば、座席の周りに集まって、サッと済ませるところまで進めたほどだ。
この時期、筆者は企業の業務改革の事例を数多く取材・執筆していた。トヨタグループのカイゼン活動も何度も取り上げた。その記事の1つが当社の社長の目に留まり、ある日、突然、「業務改革プロジェクトを立ち上げるから、リーダーになれ」と当時の社長から指名が来た。これにはかなり驚いた。筆者ともう1人、同じく業務改革の取材経験が長い社員が呼ばれ、プロジェクトはスタートした。そこで筆者が取り組んだことの1つが、編集部の会議改革だった。
少しでも会議を良くしたいと思うなら、やるべきことは色々ある。ここでは筆者の経験にも照らして、あえて「会議前の準備」の話をしてみたい。
というのも筆者は、会議改革に詳しいケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズの榊巻亮氏から「会社に入って上司や先輩から『どういう状態になっていれば、会議の準備は完了したといえるか』を教わったことがあるか?」と尋ねられたことがあるからだ。言われてみれば、教わったことがない。それは筆者だけではないはずだ。教わったことがある人など、まずいないと言っていいのではないか。意思決定の場である会議の質が経営の質を決めるというのに、その大事な会議の準備の仕方を誰も教えてはくれないのだ。
グダグダな会議をなくすには、とにかく事前の「準備」が欠かせない。榊巻氏は「会議は準備が8割」と言い切るほど。だから筆者にも会議の準備の質問をしてきたのだろう。
事前に準備をしたほうがいいことくらい、みんな分かっている。だが現実には「ちゃんと準備をして、いい会議にしよう」という意識がほとんど働かない。あるいは何を準備すればいいのかを、誰も分かっていない。筆者自身も会議改革に関わるまでは、会議の準備について深く考えたことは一度もなかった。