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スクラム採用、短期間で回す

 ベネッセは多くの企業と同様、これまでのシステム開発のスタイルはウォーターフォール型が中心で主に外部のITベンダーに開発を委託してきた。元々紙を中心にサービスを提供してきた同社は、基本的には年度の計画を立て、年度単位でサービスを提供する形を何十年と続けてきたという。そうした時間の経過のなかで教材のデジタル化の波がじわじわと押し寄せてきた。

 デジタル開発部ができる以前、同社がデジタル教材を開発する際は、情報システム部に頼るか、あるいは事業部が自ら取り組むかだった。ただスピード感を持って取り組めていたわけではなかったという。事業部が情報システム部に「こんなことを実現したい」と相談にきた際、「ちょっと待ってください。要件をまず固めましょう。ベンダーさんに見積もりを取っていただいて、契約して・・・となるとあっという間に2~3カ月たってしまい、結局半年サイクル、1年サイクルの開発になってしまった」。保本氏は当時を振り返る。

 こんな状況に危機感を持った同社はデジタル開発部を立ち上げ、デジタル教材の内製化に舵を切る。冒頭の成功案件はデジタル開発部発足後の2017年7月中旬に、既存のアプリをほぼ一から作り直した事実上の内製案件を指す。進研ゼミの高校生向け会員15万人を対象としたスマートフォン向けアプリ「サクッとスタディ(サクスタ)」をデジタル開発部が作り直したのだ。アジャイル開発で実績を出した事例となった

進研ゼミの高校生会員向けアプリ「サクスタ」
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進研ゼミの高校生会員向けアプリ「サクスタ」
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進研ゼミの高校生会員向けアプリ「サクスタ」
(出所:ベネッセコーポレーション)

 サクスタは元々事業部が約3年前に独自に開発したアプリである。それをデジタル開発部が引き継いだ。当時はユーザーである会員の反応は芳しくなく、どのボタンを押したら登録できるのか、スケジュール機能はどうやって使えばいいのかなどユーザービリティの面で分かりにくいとの声が多かったという。アプリストアでの評価も良くない状態が続いていた。この負の連鎖を断ち切るためにデジタル開発部は一からの「再開発」に挑んだというわけだ。

 開発体制はアジャイル開発手法の1つである「スクラム」を採用した。7月中旬に開発をスタートし、11月にリリース。その後2018年3月にバージョンアップして新機能を追加し現在に至っている。スクラムは1週間から2週間といった短い単位の「スプリント」と呼ぶ期間を設け、スプリントを反復しながら開発を進めていく。ウォーターフォールのように仕様を最初にきっちり決める開発手法ではなく、適宜見直しながら進めるためユーザーの要望を開発に反映しやすく、変化にも合わせやすい。

 サクスタの開発チームはプログラマーや技術サポート、事業部門の担当者など10人弱でチームを構成した。異なる分野のチームメンバーを巻き込んで開発を推進する役割を担うスクラムマスターは、デジタル開発部プラットフォーム課兼開発支援課の高木研氏が担当した。高木氏はサクスタの開発の様子を次のように語る。「ウォーターフォールと異なり、最初に要件を決め切るのではなく2週間単位で開発を回した。最初の日に2週間で作る分だけの要件を決め、2週間単位で優先順位を決めながら『これやります』『これやめませんか』と事業部と交渉しながら進めていった」。