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 「久しぶりにブームが来たのに、このままだと早々に終わってしまうかも……」。うなだれるのは、ある国内二輪車メーカーの関係者だ。明るい話を聞きに向かった「第49回 東京モーターサイクルショー」(2022年3月25~27日、東京ビッグサイト)で出会ってしまった。

ホンダの新型ロードスポーツモデル「HAWK 11(ホークイレブン)」
ホンダの新型ロードスポーツモデル「HAWK 11(ホークイレブン)」
レトロな雰囲気のデザインを採用し、「ベテランライダーを主要なターゲットに開発した」(同社)という。(撮影:日経Automotive)
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 世はまさに、バイクブームである。2輪免許の教習所は入校待ちになるほど大混雑。人気の新型車は品切れ状態が続き、中古車も値上がりしている。新型コロナウイルス禍の影響で物流が滞ったり部品が不足していたりする外部要因もあるが、需要はかなり旺盛だ。

 ヤマハ発動機販売社長の石井謙司氏は、「新型コロナウイルス感染症をきっかけに、パーソナルコミューターとしての二輪車が見直された。バイクブームの再来だ」と力を込める。ホンダモーターサイクルジャパン社長の室岡克博氏は「若年層を中心とするライダーに、積極的にバイクの魅力をアピールしていきたい。楽しく安全に、長く乗り続けてもらいたい」と期待を寄せる。

二輪車向け自動ブレーキはアリか?

 活況と言える二輪車業界だが、事故や危険運転が目立ち始めた。筆者は二輪車も四輪車も運転するが、「危ないなぁ」と思うライダーに出くわす頻度が増えたように思う。不安げな初心者だけでなく、車線の間を走っていく「すり抜け」運転をするベテランライダーの多さも気になる。

 内閣府の「令和3年版交通安全白書」からも、バイクブームに冷や水を浴びせかねない状況が浮かぶ。注目したのは、「状態別交通事故死者数の推移」というデータである。この統計では、状態を「自動車乗車中」「二輪車乗車中」「自転車乗車中」「歩行中」の4つに分類している。

上昇に転じた二輪車乗車中の交通事故死者数
上昇に転じた二輪車乗車中の交通事故死者数
(出所:内閣府「令和3年版交通安全白書」)
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 このうち、直近のデータである令和2年(2020年)を見比べると、前年比で数値が唯一上昇に転じたのが二輪車乗車中だった。10年ほどのトレンドを見ても、減少を続ける自動車乗車中や歩行中とは対照的に、二輪車乗車中の交通事故死者数を減らす難しさがうかがえる。

 自動車乗車中や歩行中の交通事故死者数が減少傾向にある理由の1つは先進運転支援システム(ADAS)の普及だろう。SUBARU(スバル)によると、同社のADAS「アイサイト」を搭載することで、追突事故発生率を84%、歩行者事故発生率を49%減少できたという。緊急自動ブレーキはすでに、軽自動車にも標準搭載されるようになった。

 だったら二輪車にも自動ブレーキを搭載すればいいのでは――。実際、ホンダは二輪車向けの緊急自動ブレーキを開発中だ。ただ、すぐに普及するような雰囲気ではない。

 理由はいくつかある。まず、自動ブレーキを作動させることで新たな危険が発生する可能性がある。具体的には、急ブレーキをかけると車体が不安定になって転倒したり、運転者が前方に投げ出されたりする。

 これを防ぐためホンダは、3段階の警告・制御を実施する。第1段階は警告のみ。それでも運転者が衝突の危険を認知できないと、第2段階として弱めにブレーキをかけることで、「運転者がハンドルをしっかり握って身構えてもらうようにする」(ホンダの開発担当者)。そして第3段階で強くブレーキをかけて衝突被害を軽減する。