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自らやらなければ誰かが公開する

 省庁などが保有する情報について、誰でもスマートフォンやパソコンで扱いやすい形式で公開することをオープンデータと呼ぶ。出所さえ明記すれば営利目的を含めて再配布や加工ができる。省庁のデータを一般の有志が使いやすく公開するのは、いわば民間の手によるオープンデータと言える。

 同様のことは海外でも起きている。2018年4月17日に在日フランス大使館の主催で日仏のオープンデータに詳しい有識者が登壇した「オープンデータは社会を変えるか?」という討論会が開かれた。登壇者の一人、パリ市データ統括局長のジャン=フィリップ・クレマン氏はフランスの行政機関が取り組むオープンデータの歴史を紹介した。

写真 在日フランス大使館主催の討論会「オープンデータは社会を変えるか?」
写真 在日フランス大使館主催の討論会「オープンデータは社会を変えるか?」
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 クレマン氏によると、フランスには2007年に「市民の視線」というNPO団体が発足して「私たちの議員」というWebサイトを構築した。国会議員らの資産公開文書などを短期間にデータ化したほか、どの議員が議会に出席してどんな議決に賛成したかといった活動内容を公開したという。

 こうした市民の取り組みが圧力となって、フランス政府はオープンデータの取り組みを加速した。2010年にオープンデータのタスクフォースを作り、2016年10月に発効した「デジタル共和国法」によって独自規格ソフトのデータなど全ての公共データをデフォルトで誰もが扱えるオープンデータにした。

 当初はフランスの行政機関の職員の間にもオープンデータへの抵抗もあった。クレマン氏によると、行政機関のデータでも必ずしも正確で完全ではなかったので、職員はデータを出すと自分の仕事が完全ではないことが分かってしまうとして、データの公開を嫌がったという。

 しかしデータを公開すれば市民が議論に参加しやすくなり、企業も経済活動に活用できるとして、「公務員が嫌がる理由を一つ一つ解消した」(クレマン氏)。クレマン氏は議員の資産公開文書がデータ化された事例を基に「自分でデータを出さないなら誰かが代わりにデータ化してしまう」と繰り返し職員を説得し、パリ市の職員全員にデジタルデータの研修を行ったという。

 フランスは約3万6000の市町村のうち4000にオープンデータを義務付けていて、現在は250の市町村がオープンデータに取り組んでいる段階という。

 クレマン氏が語るここまでのオープンデータの歴史は日本と似ている。日本も現在オープンデータに取り組む省庁や自治体が増えつつあるものの、まだ道半ばだからだ。

オープンデータが行政を変えたフランス

 しかしクレマン氏が語るその後のエピソードは日本と大きく違う。オープンデータによって「行政そのものが改善した」(クレマン氏)というのだ。

 それまでフランスの省庁は日本と同様、互いにデータを共有していなかった。「オープンデータによって互いにデータを共有して対話ができるようになり、決定プロセスが改善した」(クレマン氏)。ITに詳しい職員を集めて業務アプリケーションを開発して、ボタンを押すだけでオープンデータが出てくる仕組みを作ったという。

 クレマン氏によると、オープンデータで変わった業務の1つに行政による入札がある。入札に参加する企業がシステムに企業番号を入れると、それぞれの省庁が保有している企業情報を集められるようにした。「企業が入札時に提出する書類を簡素化した」(クレマン氏)。当初は、オープンデータによって公務員の業務が増えるうえに、情報を持っていかれるだけというイメージがあったが、「実際には使えるデータを探して仕事のやり方が変わった」」(クレマン氏)という。

 実は日本でも同じ取り組みは始まっている。政府内の情報共有によって企業が提出した情報は二度と求めない「ワンスオンリー」を目指し、行政の電子化を進めている。マイナンバー制度で導入した「法人番号」を使えば、企業が入札時に提出する書類を簡素化できる仕組みを打ち出している。

 法人番号とは国税庁が官民の情報連携を効率化するために企業や行政機関などに指定した13桁の番号だ。個人番号(マイナンバー)とは異なり原則として公表され、誰でも自由に使える。国税庁が開設した「法人番号公表サイト」で法人番号や名称、所在地の「法人基本情報」を調べられる。データは日々更新されている。

 経済産業省と内閣官房も政府が保有する法人活動情報について法人番号や法人名で一括検索や閲覧ができる「法人インフォ」(法人インフォメーション)を運用している。パソコンやスマートフォンで閲覧できるだけでなく、データのダウンロードや、Webで他のサービスを呼び出すWeb API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)によってデータを取得して商用も含め活用できる。