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 2030年代に完成する都心再開発のうち最大規模になると目されているのが「内幸町一丁目街区開発プロジェクト(仮称)」(以下、「内幸町1丁目街区」)だ。37年度以降の全体完成を目指して日比谷公園に隣接する敷地に超高層タワーなどを建設し、総延べ面積約110万m2を創出する。22年3月に開かれた会見では、東京電力ホールディングスや三井不動産、帝国ホテルなど事業者10社の社長が集結し、意気込みをアピールした。

北西側から見た「内幸町1丁目街区」の完成イメージ。手前に広がる緑が日比谷公園。約6.5ヘクタールの敷地を北地区・中地区・南地区の3つに分けて建設を進める(資料:NTTアーバンソリューションズ、公共建物、第一生命保険、中央日本土地建物、帝国ホテル、東京センチュリー、東京電力ホールディングス、NTT、NTT東日本、三井不動産)
北西側から見た「内幸町1丁目街区」の完成イメージ。手前に広がる緑が日比谷公園。約6.5ヘクタールの敷地を北地区・中地区・南地区の3つに分けて建設を進める(資料:NTTアーバンソリューションズ、公共建物、第一生命保険、中央日本土地建物、帝国ホテル、東京センチュリー、東京電力ホールディングス、NTT、NTT東日本、三井不動産)
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街区の低層部と日比谷公園が一体化するイメージ。各街区の設計者やデザインアーキテクトには、PLPアーキテクチャーの他に日建設計や山下設計、NTTファシリティーズ、Atelier Tsuyoshi Tane Architectsが参画する(資料:NTTアーバンソリューションズ、公共建物、第一生命保険、中央日本土地建物、帝国ホテル、東京センチュリー、東京電力ホールディングス、NTT、NTT東日本、三井不動産)
街区の低層部と日比谷公園が一体化するイメージ。各街区の設計者やデザインアーキテクトには、PLPアーキテクチャーの他に日建設計や山下設計、NTTファシリティーズ、Atelier Tsuyoshi Tane Architectsが参画する(資料:NTTアーバンソリューションズ、公共建物、第一生命保険、中央日本土地建物、帝国ホテル、東京センチュリー、東京電力ホールディングス、NTT、NTT東日本、三井不動産)
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 会見に参加した筆者が驚いたのは、同計画のマスターデザイン・プレイスメイキングストラテジーの担当者に、英ロンドンを拠点に活動する設計事務所PLPアーキテクチャーが起用されたことだ。日本語の表現に換えるならば、「街区の魅力向上と戦略提案」を担う立場となる。

 たしかに同社はロンドンなど世界各地でチャレンジングな都市開発プロジェクトに参加してきた実績を持つ。とはいえ、都心一等地で、「内幸町1丁目街区」に匹敵する巨大開発は世界の都市を見てもほとんどない。日本国内に著名な設計事務所は数々あるのに、なぜ東京都心における重要なプロジェクトで、しかも戦略提案の担当に海外の事務所が選ばれたのだろうか。

 会見後の3月末、PLPアーキテクチャーの中島雷太駐日代表に会いに、東京都渋谷区にあるオフィスを訪ねた。起用の経緯を質問すると、中島氏は次のように説明した。「社会情勢が劇的に変わっている中で、何をどうつくればいいのか根本的に考え直さなければいけないと考える事業者が増えている。その中で、世界の先進的な事例の知見を持つ、我々のような海外の会社に知恵を出してもらいたかったのだと思う」

PLPアーキテクチャーの中島雷太駐日代表。英国で建築設計に携わる。英国登録建築家。2017年から現職(写真:本人提供)
PLPアーキテクチャーの中島雷太駐日代表。英国で建築設計に携わる。英国登録建築家。2017年から現職(写真:本人提供)
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ロンドンのテムズ川南岸で、総事業費13億ポンド(約1700億円)を投じる民間再開発プロジェクト「Bankside Yards(バンクサイドヤード)」。PLPアーキテクチャーはマスタープランや6棟の設計を担う。23年にフェーズ1、27~28年ごろにフェーズ2が完成する予定だ(資料:PLP Architecture)
ロンドンのテムズ川南岸で、総事業費13億ポンド(約1700億円)を投じる民間再開発プロジェクト「Bankside Yards(バンクサイドヤード)」。PLPアーキテクチャーはマスタープランや6棟の設計を担う。23年にフェーズ1、27~28年ごろにフェーズ2が完成する予定だ(資料:PLP Architecture)
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