無人コンビニの代名詞となった「Amazon Go」に始まり、中国の新型のスーパーマーケットなど、2018年に入って小売店のニュースを目にする機会が増えた。新規プレイヤーがゼロから立ち上げる小売店は、どれも新鮮で目新しい。失うものがない強さを、まざまざと見せられている気分だ。
その傍らで、既存の小売店の減速は続いている。国内では百貨店の閉鎖が相次ぎ、店舗数が増加するコンビニエンスストアも既存店を見れば、その売上高は2年連続減少している。
海外に目をやれば、2017年の米国の小売店の閉鎖は約7000件。この数字はリーマン・ショックが起きた2008年を超える数だという。特に、国内同様百貨店の不振や百貨店と二人三脚で歩んできたアパレル企業の低迷は顕著だ。その中で、果敢に業界慣習を壊しにかかる米国企業がいる。2001年創業のレベッカ・ミンコフだ。2010年以降に起業したEC(電子商取引)を武器に立ち上がった新興企業ではない。日本では知名度が低いレベッカ・ミンコフは、すでに100億円を超える売上げのブランドに成長している。

コレクションの常識を覆した
レベッカ・ミンコフがディスラプター(破壊者)として注目されたのは、2016年2月に開催された春のコレクションだった。それまで、コレクションで披露されるアパレル商品は、春のコレクションであれば、1シーズン先の秋冬のアパレル商品を披露するのが定番だった。当然ショーを見た後は、当該コレクションが華々しくファッション誌を彩る一方で、販売は6カ月先となる。
それを、レベッカ・ミンコフが変えた。春のコレクションで、春夏商品を披露するように切り替え、コレクションを見た消費者はすぐに商品を購入できるようにしたのだ。いわゆる「see now buy now(今見て、すぐ買う)」の火付け役となった。その後、次のシーズンコレクションでは、トミー・ヒルフィガーなど大手ブランドが追従する大規模なムーブメントを巻き起こした。
先日、レベッカ・ミンコフの創業者である、ユリ・ミンコフ氏にインタビューをする機会があった。当時を振り返って、「非常に怖かった」と打ち明けたのが印象だった。「アパレル業界や百貨店業界、報道機関はどう思うか、消費者はどう振る舞うのか、とても緊張した」と話した。