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 「最近学校に、端末を年に何回授業で使いますかと聞いてみるんです。『年に何回じゃないでしょ、毎日でしょ』と言い返してくる学校はいいのですが、『学期に1回くらいかな』と本当に言うところがあるんですよ」。国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの豊福晋平准教授・主幹研究員はGIGAスクール構想で全国の小中学校に配られた端末についてこう話す。

 この話に驚いた。少なくともいくつかの授業では児童・生徒の机の上にいつでも使える状態でタブレットやパソコンが置かれるものだと思っていたからだ。

「文具」に4万5000円

 文部科学省は2021年3月、児童・生徒に1人1台の端末を配備するGIGAスクール構想の進捗を明らかにした。全国に約1700ある地方自治体の97.6%が2020年度中に端末の調達を完了する見込みで、2021年度の2学期以降に納品されるのは、残り22自治体だけだ。GIGAスクール構想が掲げる学習者主体の学びの実現に向けたインフラ整備は着実に進んでいるように見受けられる。

 もちろん、新型コロナウイルス禍で端末の配布が3年前倒しされたため、端末は届いたものの活用する環境の整備が間に合っていない地方自治体もあるだろう。それでも「学期に1回」とは少なくないか。国は端末整備支援に2973億円の予算をつけて、端末1台当たり最大4万5000円の補助金を地方自治体に支給。学期に1回しか使わない「文具」に4万5000円かけたことになる。

情報モラル教育、「影」の部分を強調

 学期に1回は極端な例だとは思うが、学校の現場はいまだにITの活用を嫌う、あるいは避けているように見える。なぜなのか。話は36年前の昭和の時代にまでさかのぼる。

 1985年(昭和60年)6月、臨時教育審議会第1次答申は教育改革の1つとして「情報化」を提言した。同年8月には当時の文部省が設けた教育情報化に関する会議が1次審議の取りまとめを公表し、情報化社会における学校教育の役割や、学校教育にコンピューターを利用する際の基本的な考え方を示した。

 翌1986年4月、臨時教育審議会第2次答申では児童・生徒に必要な「新しい資質」として「情報活用能力(情報リテラシー)」を定義するとともに、情報モラルの確立、情報化の「光と影」への対応などについて触れた。

 情報モラルと情報化の「光と影」への対応は教育情報化を適切に進めるために出てきたものだ。だが、学校外で進む社会の情報化に合わせられず、むしろ学校の情報化にブレーキをかけることになってしまった。情報モラル教育は情報化の「影」の部分を強調するあまり、児童・生徒が情報化に主体的にかかわっていけるように進展しなかったのだ。「特にこの20年くらいは学校の外側で『裏サイト』やSNS(交流サイト)のトラブルが起こり、できるだけ(情報機器などを)排除しようということを基本的な発想としてやってきた」(豊福氏)。