「平成」から「令和」へ元号が変わり2週間が過ぎた。大型連休後のザワザワした雰囲気も落ち着いたところで、元号を越えて引き渡されたITの課題を1つ考えてみたい。それは業務データのバックアップだ。とても地味だがIT活用では欠かせない。難易度は高く、平成が残した厄介なお荷物と言える。
データバックアップの重要性にいまさら説明は要らないだろう。人的ミスやシステム障害、自然災害やテロといった不測の事態に備え、日々の運用の中でデータをコピーして保管しておく。差分や増分、重複排除や圧縮、階層化、遠隔保管などのテクニックがある。
平成の30年間を振り返るとき、日本で発生した自然災害の数は特筆すべきだ。阪神大震災、東日本大震災、熊本地震、平成30年7月豪雨など多くの災害が被害をもたらした。BCP(事業継続計画)やDR(ディザスタリカバリー)の実現は、平成を通じた一大テーマだった。
しかし自分が知る限り、災害をはじめとした有事にバックアップシステムにフェールオーバーできた事例はそう多くない。原因の1つは、データバックアップの不備にある。
「データの整合性に不安があり待機系に切り替えられなかった」「データはバックアップしているがリストアの経験が無い」。取材で聞いた現場の声からは、データは保管しているが「いざというときに使い物にならないバックアップ」の実態が浮かび上がる。
なぜ、きちんとデータをバックアップできないのか。大きな理由は2つ考えられる。1つはシステムの複雑性、もう1つは費用の問題だ。
平成の30年間に限っても、社内で相当数のシステムが立ち上がったはずだ。構築した時期やベンダーにより、OSやデータベース(DB)、バックアップツールなどが個別最適になる例はよくある。バックアップの運用ルールがシステム間で異なっていたり、運用担当者が曖昧だったりと、バックアップの難易度は高まるばかりだ。
個別最適のシステムに対しては、統一的なバックアップ基盤を用意する手法が有効だ。各システムのコピーデータをストレージの1カ所に集め、共通のツールでバックアップする。しかし、こうした「バックアップ改善」の予算を確保するハードルは高い。バックアップのような定常運用はできて当然という風潮が少なからずあるからだ。