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 「グローバル経済の発展にともない、感染症リスクへの対応は一国にとどまらず国際社会全体にとって看過できない喫緊の課題となっています」

 日本経済新聞社が2014年から主催する感染症対策のシンポジウム「日経アジア・アフリカ感染症会議」の開催概要の冒頭の一文だ。何度となく口にしてきたこの文言が現実のものとなってしまった。新型コロナウイルスの世界的な大流行に際して私が抱いている思いだ。

 2016年から3年間、私は「日経アジア・アフリカ感染症会議」の事務局メンバーの1人だった。当時、私は日本経済新聞社に出向していた。シンポジウムを企画・営業・運営する事務局の人員が人事異動で足りなくなったため、メンバーに加わることになった。感染症対策にも医療にも素人の私に当時の上司が声をかけてくれたのは「体が丈夫そうだから」という理由だ。

第6回日経アジア・アフリカ感染症会議Webサイト
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第6回日経アジア・アフリカ感染症会議Webサイト

 日経アジア・アフリカ感染症会議は年に一度、国内外から産官学の専門家を集めて、結核、マラリア、エボラ出血熱などの感染症対策を話し合うシンポジウムだ。これだけ聞くと登壇者がそれぞれプレゼンテーションをして、最後に「感染症対策が重要だ」と議長が抽象的な結論を述べるだけで具体策は何も出てこないような、言いっぱなしのシンポジウムを思い浮かべる人も多いかもしれない。

 私自身、事務局メンバーになる前は実はそう思っていた。本番前の1~2カ月が忙しいだけであとは時間に余裕があるのではないかと期待していた。ところが実態は全く違っていた。振り返れば、年中忙しかった。

本会議で出される“宿題”

 この会議の特徴は、本会議の最後に策定するステートメントと、専門家有志からなるコンソーシアム(部会)だ。

 ステートメントとは本会議の議論の内容をまとめたものだ。議題ごとに背景、現状、課題、求められるアクションを書いている。2日間の会議で分量は20ページ以上。会議の最後にこれを議長が読み上げて、参加者からの意見を求める。意見を反映したステートメントに参加者全員の合意を得てから会議を終える。過去のステートメントは会議のWebサイトに掲載している。

 コンソーシアムは結核、マラリアといった分野ごとに有志が集まって作る。年間を通じて活動し、産官学の関係者が知見を共有し、協力しながら本会議のステートメントにある「求められるアクション」を実行に移す。