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 公正取引委員会は携帯電話市場における競争政策上の課題を整理するため、2018年4月から「携帯電話分野に関する意見交換会」を開いている。2016年8月に「携帯電話市場における競争政策上の課題について」と題した報告書を公表しており、今回はこのフォローアップの位置付けとなる。

 公取委が前回の報告書で指摘した課題は以下の7点である。

公取委が2016年8月の報告書で指摘した課題
(1)~(4)は「競争政策上、望ましい行為」、(5)~(7)は「独占禁止法上、問題となり得る行為」
課題概要
(1)回線契約と端末販売の分離端末価格を通信料金から大幅に割り引く携帯電話大手3社の販売方法は見直しが望ましい
(2)端末のSIMロック乗り換えの障壁となり得るSIMロックをかけないことが望ましい
(3)期間拘束・自動更新乗り換えの障壁となり得る契約解除料などは必要最小限にすることが望ましい
(4)HLR/HSSの開放通信サービスの多様化に資するHLR/HSSを、携帯電話大手3社はMVNO(仮想移動体通信事業者)に開放することが望ましい
(5)割賦契約における価格拘束携帯電話大手3社が端末購入における割賦契約の総額を機種ごとに固定することにより、実質的に販売代理店の端末の販売価格を拘束する行為
(6)中古端末の流通促進携帯電話大手3社が下取り端末の国内流通を端末メーカーが制限するなどの行為
(7)OSの提供者による不当な制約OSの提供者が端末メーカーに対して不当に制約するなどの行為

 (1)~(4)は程度の差こそあれ、方向性は総務省と同じ。(5)は同報告書の指摘を受け、NTTドコモとソフトバンクが改善に動いた(KDDIは元々、問題なかった)。(6)は米アップルの「iPhone」が国内の中古市場であまり出回っていないこと、(7)は米グーグルが欧州で同様な指摘を受けて大きな問題に発展したことを踏まえたものだが、問題となる行為はこれまで明らかになっていない。

 公取委はこれまで総務省と共同でガイドラインを策定してきたこともあり、通信分野を対象とした公取委単独の報告書は当時が初めて。もちろん、これには大きな狙いがあり、最大の標的は「iPhone」に関するアップルと携帯電話大手3社の販売施策だった。2016年10月に来日したティム・クックCEO(最高経営責任者)がわざわざ公取委に出向いて説明したほどだ。結局、公取委は目立った成果を得られぬまま終わった格好となったが、今回は何を狙ってくるのだろうか。