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 米Apple(アップル)が課す手数料をめぐり、人気ゲーム「Fortnite(フォートナイト)」を手掛ける米Epic Games(エピックゲームズ)がアップルと法廷で争っている。争いの影響はアプリ業界にとどまらない。ゲーム業界に飛び火し、最終的には自動車などの製造業にまで及ぶのではないか。「コト売り」への転換を図る製造業にとって、アプリ業界の手数料ビジネスは「お手本」だ。

 エピックゲームズは、アップルがプラットフォーマーという優位な立場を利用し、アプリストアで課す30%の配信手数料が高額だとして裁判所に訴えている。米国で21年5月3日(現地時間)から、両社トップが出廷する公判が始まった。もともと米国で注目を集めていた争いだが、同日以降、米メディアでの報道が増えている。

 注目を集めるアップルとエピックゲームズの争い――。その影響を読み解く前に、まずは両社が係争に至った経緯や現状をおさらいしたい。

 きっかけは20年8月だった。エピックゲームズが配信手数料を回避する独自課金システムを導入したことを機に、アップルが規約違反としてエピックゲームズのアプリの配信を停止。それを不服としてアップルとの係争に突入した。

エピックゲームズの独自課金システムの告知画像
エピックゲームズの独自課金システムの告知画像
独自課金システム「Epic direct payment」の利用者に対して割引を実施すると20年8月に告知した。(出所:エピックゲームズ)
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 その後、配信手数料などアップルのアプリストアの運営に不満を持つ音楽配信のスウェーデンSpotify Technology(スポティファイ・テクノロジー)など複数の企業とタッグを組み、NPO「Coalition for App Fairness」を同年9月に立ち上げた。現在、同NPOへの参加団体の数は50近くにまで増えた。

 スマートフォン市場が立ち上がって間もない頃は、アプリストアはスマホアプリ市場拡大に大きく貢献した。特に営業リソースが乏しい小規模なアプリ開発者にとって成長のきっかけになった。一方で、スマホやスマホアプリの市場が成熟するにつれて、30%という手数料が高額だという声も大きくなってきた。

 ただ、手数料が高額だという声は以前からささやかれてきた。エピックゲームズがこのタイミングでアップルに勝負を挑んだ理由は、大きく2つある。

 1つは、米大手IT企業による市場独占への懸念に対して、かつてないほど世間の注目が集まっていることである。IT大手への逆風に合わせて、エピックゲームズは反旗を翻したわけだ。

 20年7月下旬、米議会下院の司法委員会がアップルや米Google(グーグル)、それに米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)や米Facebook(フェイスブック)を加えた米大手IT4社のCEO(最高経営責任者)を呼び、反トラスト法(独占禁止法)をめぐる公聴会を開催した。その模様は世界中で報道され、注目を集めた。エピックゲームズにとって「大義名分」を掲げやすく、世間の賛同を得られると考えたのだろう。