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 2023年第1四半期(1~3月:以下23年Q1)の半導体市場は、前年同四半期に比べて21%も縮小した。足を引っ張ったのはPCやスマートフォン向け半導体であり、例えば米Intel(インテル)と韓国Samsung Electronics(サムスン電子)の半導体部門の23年Q1売上高は、それぞれ前年同四半期比36%と49%と大幅に減少している。そのようななか、国内ファブレス半導体メーカーであるソシオネクストの23年Q1売上高は539億円と前年同期比の318億円から69%も増加した。同社の代表取締役会長兼社長兼CEOである肥塚 雅博氏がその理由を2023年4月28日のオンライン決算説明会で語った(図1)。

図1 オンライン決算説明会の肥塚 雅博氏
図1 オンライン決算説明会の肥塚 雅博氏
(画像:説明会の動画をキャプチャー)
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 2023年5月8日、新型コロナウイルス感染症の位置付けは2類から5類に移行し、1つの区切りがつけられた。同感染症のまん延により勤務体系や生活スタイルに大きな変化があった。在宅勤務や巣籠もり生活が広まり、それが半導体業界にも影響を及ぼした。具体的には、PCやスマートフォン向けの半導体や、クラウドやデータセンターのサーバー向け半導体の売り上げが大きく膨らみ、2022年春ごろまで世界半導体市場は絶好調の状態だった。

 しかし、2022年春を過ぎると状況が一変した。PCやスマホ、サーバーの更新が一巡し、それら向けの半導体の売り上げに陰りが見えてきた。追い打ちをかけたのがインフレ抑制策として打たれた金利引き上げである。消費が落ち込み、半導体市場は縮小に転じた。米SIA(Semiconductor Industry Association:米国半導体工業会)の発表によれば、23年Q1の世界半導体市場は前年同四半期に比べて21%小さくなった*1

 ただし、すべての半導体製品が同じように売れなかったのではない。現在、売り上げ不振な半導体は、PCやサーバー向けマイクロプロセッサー(MPU)、スマホ向けSoC(System on a Chip)、およびこれらと一緒に使うメモリーなどである。このため、これらの製品を主力とする半導体メーカーでは、23年Q1の売上高が前年同四半期に比べ大幅に減少した。Samsung 英文決算会見資料 をはじめとするメモリーが主力製品の半導体メーカーは売上高がほぼ半分に減ってしまった(図2)。

図2 2023年第1四半期(1~3月)の売上高の前年同四半期比
図2 2023年第1四半期(1~3月)の売上高の前年同四半期比
現地通貨ベースで算出(出所:各社の決算データを日経クロステックがまとめた)
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 MPUメーカーやスマホ向けSoCメーカーも、メモリー主力のメーカーほどではないが、売上高が減少している。中でも、微細プロセスの開発で後れを取り再建中のIntelは、23年Q1の売上高が前年同四半期に比べて36%減少し、最終損益が27億5800万米ドル(約3730億円)の赤字に陥った ニュースリリース 。同社としては過去最大の四半期最終損失を記録した。このためだろう、業績が芳しくなかったGPU(Graphics Processing Unit)部門であるAccelerated Computing Systems and Graphics Group(AXG)*2を廃止した。AXGのPC向けGPU製品はPC向けMPU部門(Client Computing Group:CCG)へ、AXGのサーバー/データセンター向けGPUはサーバー/データセンター向けMPU部門(Data Center and AI:DCAI)へそれぞれ移管された。また、AXGが開発提供していた暗号資産マイニング用ASIC「Blockscale ASIC」の生産は中止になった(図3)。

図3 暗号資産マイニング用ASIC「Blockscale ASIC」の生産中止のお知らせ
図3 暗号資産マイニング用ASIC「Blockscale ASIC」の生産中止のお知らせ
(出所:Intel)
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