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 友人がフリーランスエンジニアを辞めた。高校の卒業式以来、久しぶりに会ったのだが、この5月から企業に勤めるという。もともとIT企業でSEとして働いていた筆者にとって、なかなかの衝撃だった。「フリーランスは、ITエンジニアにとって理想の働き方の1つ」というイメージがあったためだ。場所や時間に縛られず自由に働けるフリーランスの働き方はITエンジニアと相性が良さそうなものだが、なぜ手放す選択をしたのか。

 友人の話によると、最も大きな要因はストレスだった。フリーランスの契約においては、仕事を依頼する側である企業の立場が圧倒的に強いそうだ。エンジニアの立場は弱く、むちゃな要求や疑問の残る仕様でも仕事を選べないことに悩まされたという。

 特に未経験からフリーランスとして働く場合、知名度を上げるために最初は格安であっても仕事を多く請け負い、実績を作っていくことになる。複数案件の締め切りに追われながらも、仕事をもっと受注しなければならないといった焦燥感を常に抱えていたという。「時間や場所にとらわれない働き方」の代償かもしれない。

 レバテックフリーランスが2023年5月に発表した調査によると、取引先から理不尽な要求を受けたことが「ある」と回答したフリーランスエンジニアの割合は全体の20.5%だった。具体的なトラブル内容は「業務の内容・範囲の変更」が最も多く、「契約期間の短縮や破棄、報酬の減額」「報酬の支払い遅延や未払い」と続く。受注後の仕様変更や機能追加に振り回される実態がうかがえる。

フリーランスエンジニアが経験したトラブル内容(複数回答可)
フリーランスエンジニアが経験したトラブル内容(複数回答可)
(出所:レバテックフリーランス)
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 SNS(交流サイト)では「未経験からフリーランスエンジニアに転身、年収は倍増」などとうたう書き込みが氾濫している。しかし、インターネット上で成功事例を声高に主張することはあっても、失敗談を積極的に発信する人は少ないだろう。成功談だけが一人歩きしてはいないだろうか。