全1983文字
PR

 脱炭素社会の実現に向けた技術革新が加速している。建築業界では、コンクリートを巡る技術開発が活発だ。コンクリートを固めるために必要なポルトランドセメントを使わない新しいコンクリートの研究が、東京大学から相次いで発表された。東大大学院工学系研究科建築学専攻の野口貴文教授と丸山一平教授が中心となって開発したカルシウムカーボネートコンクリート(以下CCC)と、東大生産技術研究所の酒井雄也准教授が開発した触媒を用いたコンクリートだ。どちらも、脱炭素型の新しいコンクリートを目指す研究である。

東京大学大学院工学系研究科建築学専攻の野口貴文教授と丸山一平教授が中心となって開発したカルシウムカーボネートコンクリート(写真:東京大学)
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻の野口貴文教授と丸山一平教授が中心となって開発したカルシウムカーボネートコンクリート(写真:東京大学)
[画像のクリックで拡大表示]
東京大学生産技術研究所の酒井雄也准教授が開発した、砂とアルコールと触媒でつくった硬化体(写真:日経クロステック)
東京大学生産技術研究所の酒井雄也准教授が開発した、砂とアルコールと触媒でつくった硬化体(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 コンクリートの原料であるポルトランドセメントは、製造過程でCO2を排出する。石灰石(炭酸カルシウム、CaCO3)を加熱して、生石灰(酸化カルシウム、CaO)とCO2を生成する。この生石灰がポルトランドセメントの原料になる。つまり、石灰石を用いてポルトランドセメントを製造する場合、CO2の排出は避けて通れない。

 従来の脱炭素化は、ポルトランドセメントの使用量を抑えるものだった。ポルトランドセメントの代わりに、鉄をつくるときの副産物や、火力発電所などで石炭を燃焼する際に生じる灰を用いる。いずれも副産物のため、これらの生成に必要なCO2の排出量をほぼゼロにできる。

 さらに、コンクリートにCO2を吸収させて固定する方法も、技術開発が進んでいる。コンクリートに直接CO2を吹き付けて固定する方法や、CO2とカルシウム成分を反応させて骨材をつくりコンクリートに固定する方法などが開発された。

 そして、究極の脱炭素型コンクリートともいえるのが、ポルトランドセメントを全く使わずにコンクリートを製造する技術の研究開発である。

 CCCは、CO2と水と使用済みコンクリートを原料とする。使用済みコンクリートに含まれるカルシウム成分とCO2を反応させて炭酸カルシウムをつくる。これを使用済みコンクリートの粒子の間に析出させて、新たなコンクリートを製造する。ポルトランドセメントを用いず、水和反応もしない。新しいコンクリートである。

 酒井准教授が開発したコンクリートは、砂とアルコールと触媒を原料とする。これらを密閉容器に入れて加熱・冷却し、砂の化学結合を切断・再生することで、硬化体を製造する。加熱温度は240度程度。砂の主成分である二酸化ケイ素(SiO2)同士を結合して硬化させるので、砂漠の砂や廃ガラスでも製造できる。二酸化ケイ素を主成分とする砂や砂利は、あらゆる場所で調達できる点で枯渇の心配がない。

 これら2つの研究は始まったばかりだが、数センチ程度の硬化体の製造に成功している。両者とも、ポルトランドセメントを使わないので、CO2の排出量を大幅に削減できる。しかも、主原料が使用済みコンクリートや砂であり、資源不足の心配がない。解体後には再利用でき、資源循環型でもある。まさに脱炭素社会に適したコンクリートだ。